看護師をしていると“看護観”なるものに必ず出会う。
必ずというのは看護業界がそういう教育をしているから。
それがいいとか悪いとかいう話は今回は置いとく。
看護観とは少し違うかもしれないが、自分の場合は看護師としてのスローガンがある。
「安心と安全の小児緩和ケア」である。
これは緩和ケア認定看護師になった時に掲げたもの。
でも実は元々は「笑顔と安心の小児緩和ケア」を掲げて認定看護師の教育課程に進んでいた。
当時は何の疑いも躊躇いもなくこのスローガンを強く心に刻んでいのだが、ある時恩師に尋ねられる。
「あなたの言う“笑顔”というのはどんな笑顔のことを指しているのか?」
いきなり言われても意味がわからない。
笑顔は笑顔だろうと。
困惑していると質問が続く。
「あなたの思う子どもの笑顔はあなた自身に向けられたものか?もしくは1人でもニコニコしていればいいのか?」
そこで少し思い悩む。
『自分に向けた笑顔である必要はない。だがひとりでニコニコ…それはそれでいい気もするが少し引っかかる…』
さらに恩師の言葉は続く。
「子どもが笑顔になる瞬間というのは、はてさてどんな時だろうね?楽しい時?嬉しい時?だとして病気で苦しむ子どもを楽しい気持ち、嬉しい気持ちにするのがあなたの役割になるのかい?」
ふむ。
ここらでさらにひとつ深く潜る。
『入院生活を楽しんでもらいたい気持ちはある。だが、「楽しい」もしくは「嬉しい」入院生活であってほしいのは副次的な話で根本はそこじゃない。遊園地に遊びに来てるわけじゃないのだから。楽しさや嬉しさを起因とした笑顔が最大目標であるのはやはり違和感がある。だとすれば自分のイメージする笑顔というのは…』
『子どもが安心した時に見せる穏やかで自然な笑み』
なのかな。
そして“安心”のためには“安全”は絶対に必要だ。
そうなるとスローガンにすべきは“笑顔”よりももっと根本的な“安全”ではないか?
ということで自分のスローガンは「安心と安全の小児緩和ケア」となった。
もしかしたら“笑顔”って打ち出した方がわかりやすいしイメージしやすいし受け入れられやすいかもしれない。
でも自分の中ではそれだと本当の願いが隠れてしまう気がした。
だからあえてちょっと固くて伝わりにくいかもしれないが“安心と安全”を掲げている。
言葉には魂が宿る。
思いが宿る。
日常生活でも意識していることだけど自分の生き様となるスローガンではなおさらにしっかり意識している。
これからも「安心と安全の小児緩和ケア」を掲げて子どもたちのために活動を続けたい。
おわり。
コメント