観察項目は覚えたはずなのに、患者さんを前にすると、どこを優先して見ればよいのかわからない。
バイタルサインや検査値は確認できても、その変化が何を意味するのか、うまく説明できない。
看護学生や新人看護師に限らず、経験を重ねてからも、こうした迷いを感じることがあります。
今回紹介するのは、横山俊樹先生監修の『観察とアセスメントは解剖生理が9割』です。
解剖生理の知識を覚え直すだけで終わらせず、患者さんの何を見て、その変化をどう考えるのかへつなげるための一冊です。
『観察とアセスメントは解剖生理が9割』はどんな本?
本書の副題は「ICUナースのための解剖生理」です。
ICUでは、患者さんの状態が短時間で変わることがあります。モニターに表示される数値だけでなく、呼吸の仕方、循環の変化、尿量、意識、使用している薬剤など、複数の情報をつなげて考える力が求められます。
本書は、その判断の土台になる解剖生理を、観察やアセスメントと結びつけて学べるように構成されています。
出版社が公表している目次は、大きく3つの章に分かれています。
- 臓器別の解剖生理:呼吸器、循環器、消化器、腎・泌尿器、脳神経
- ICUで使われる薬剤と生理:鎮静薬、鎮痛薬、循環器系薬剤
- 複数の臓器や管理をつなげて考える内容:循環動態と呼吸管理、呼吸と腎臓、血圧管理と体液管理
解剖生理を臓器ごとに学ぶ章だけでなく、身体の中で起きていることを横断的に考える章が設けられている点も特徴です。
| 書名 | 観察とアセスメントは解剖生理が9割 |
|---|---|
| 副題 | ICUナースのための解剖生理 |
| 監修 | 横山 俊樹 |
| 出版社 | メディカ出版 |
| 発行 | 2022年7月 |
| 判型・ページ数 | B5判・152ページ |
| 定価 | 2,860円(税込) |
| ISBN | 9784840478748 |
| 公式情報 | メディカ出版公式ページ |
この本をおすすめしたい3つの理由
1.観察項目と「なぜ見るのか」を結びつけやすい
実習や新人教育では、呼吸回数、SpO₂、血圧、脈拍、尿量、意識レベルなど、多くの観察項目を学びます。
ただ、項目だけを覚えていると、確認することが増えるほど優先順位がわからなくなります。異常な数値を見つけても、身体の中で何が起きているのかを考えられなければ、その先の報告や対応につながりません。
臓器の構造と働きがわかると、なぜその変化が起きるのか、次にどこを見る必要があるのかを考えやすくなります。
本書は、解剖生理の知識を観察・アセスメントのポイントと結びつけているため、「覚えるための勉強」から「患者さんを見るための勉強」へ進みたい人に向いています。
2.臓器を別々に見るだけで終わらない
教科書では、呼吸器、循環器、腎臓などを分けて学ぶことが多いと思います。学び始めるときには、その方が理解しやすいからです。
一方、患者さんの身体では、それぞれの臓器が独立して動いているわけではありません。
呼吸状態の変化が循環に影響することもあれば、循環や体液の変化が腎機能や呼吸管理に関係することもあります。一つの数値だけで判断せず、ほかの所見とのつながりを見る必要があります。
本書には、循環動態と呼吸管理、呼吸と腎臓、血圧管理と体液管理を組み合わせて考える章があります。臓器別に覚えた知識を、患者さんの全身状態へつなげる視点を得やすい構成です。
3.学び直す範囲を絞りやすい
解剖生理を最初から学び直そうとすると、情報量の多さに圧倒されることがあります。
骨や筋肉、神経、臓器の名称から始めて、すべてを完璧に復習してから臨床に結びつけようとすると、なかなか患者さんの観察までたどり着けません。
本書はB5判152ページで、ICU看護で求められる内容を中心に扱っています。網羅的な解剖生理の教科書とは役割が異なり、臨床で使う場面を意識しながら学ぶ範囲を絞りやすい本です。
いま受け持っている患者さんや、自分が苦手に感じている臓器から読み始める使い方もしやすいでしょう。
観察は、項目を埋めるために行うものではない
看護師は、患者さんのそばで小さな変化に触れられる職種です。
いつもより呼吸が速い。返事が短い。少し姿勢が違う。手足が冷たい。尿量が減っている。
一つひとつは目立たない変化でも、身体の仕組みとつなげて考えることで、その人に起きていることが見えてくる場合があります。
反対に、解剖生理の知識があっても、目の前の患者さんに向けて使えなければ、観察にはつながりません。
知識があるから気づけることがあります。気づいた変化を知識に照らして考えることで、次の観察や報告が具体的になります。
解剖生理を学び直す意味は、試験に正解することだけではなく、患者さんの変化を見逃さず、根拠をもって動くための土台をつくることにあります。
この本の使い方
受け持ち患者さんに関係する章から読む
最初から順番に読み切ろうとしなくても構いません。
呼吸状態が気になる患者さんを受け持っているなら呼吸器から、心不全や血圧管理に迷っているなら循環器から読む。実際の患者さんと結びつけることで、解剖生理の知識が使える形で残りやすくなります。
観察項目を一つだけ深掘りする
「今日は呼吸回数を見る理由を説明できるようにする」「この薬を使うときに血圧を見る理由を確かめる」というように、一度に扱う問いを絞る方法もあります。
一つの観察に根拠を持てるようになると、関連する所見にも目が向きます。チェックする項目を増やすより、見る意味を一つずつ理解する方が、アセスメントの力につながります。
観察した事実と考えたことを分けて言葉にする
本で得た知識を、実際の報告に使ってみることも大切です。
「呼吸状態が悪いです」だけで終わらず、何を観察し、どの変化からそう考えたのかを言葉にする。事実と自分の判断を分けて伝えることで、不足している観察にも気づきやすくなります。
こんな人におすすめ
- 観察項目は覚えたものの、根拠を説明することに自信がない看護学生
- 患者さんの変化を報告するとき、何から伝えるか迷う新人看護師
- ICU・HCU・救急・急性期病棟への配属や異動を控えている看護師
- 解剖生理を臨床で使える形でもう一度学び直したい看護師
- 後輩へ「なぜ観察するのか」を説明できるようになりたい人
購入前に確認したいポイント
本書は、すべての解剖生理を網羅する教科書ではありません。副題のとおりICU看護を中心に構成され、鎮静薬や循環器系薬剤、呼吸・循環管理なども扱っています。
一般病棟や看護実習で応用できる考え方はありますが、小児特有の解剖生理や基準値、発達段階に応じた観察を詳しく学ぶ本ではありません。小児看護に活用するときは、小児の専門書と併用する必要があります。
また、出版社の公式ページには正誤表が掲載されています。購入後は、使用する前に最新版を確認しておくと安心です。
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解剖生理の知識を得たあとに、臨床での準備や判断の流れまで学びたい場合は、同じ「9割」シリーズの次の本も選択肢になります。
『観察とアセスメントは解剖生理が9割』が身体の仕組みから観察の根拠を学ぶ本だとすれば、『先輩ナースのアセスメントと実践は事前準備が9割』は、さまざまな看護場面で先輩ナースがどのように準備し、考え、実践するのかを学ぶ本です。自分の課題に合わせて使い分けられます。
まとめ
『観察とアセスメントは解剖生理が9割』は、解剖生理の知識を、患者さんの観察とアセスメントへつなげたい人のための本です。
何を観察するかを覚えるだけでは、患者さんの状態が変わったときに迷います。身体の構造や働きがわかると、目の前の変化に意味を見いだし、次に見ることや伝えることを考えやすくなります。
「観察はしているけれど、考えたことをうまく言葉にできない」「解剖生理を勉強し直したいけれど、どこから始めればよいかわからない」と感じている人が、臨床につながる学び直しを始めるときに選びやすい一冊です。
おわり。

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