子どもの話をきちんと聞こうと思っているのに、つい質問を重ねてしまう。
心配するほど、助言や励ましが先に出る。子どもが黙ると、何とか話してもらおうとしてしまう。
小児看護の場でも、家庭や学校でも、子どもとの関わりにはこうした難しさがあります。
今回紹介するのは、こど看さんの著書『児童精神科の看護師が伝える 子どもの傷つきやすいこころの守りかた』です。
子どもに何を言えばよいかだけでなく、大人がどのような姿勢で子どもの言葉や行動を受け止めるのかを考えるきっかけになる一冊です。
『子どもの傷つきやすいこころの守りかた』はどんな本?
著者のこど看さんは、児童思春期精神科病棟に10年以上勤務する精神科認定看護師です。病棟で子どもたちと長い時間を過ごしてきた看護師の視点から、子どものこころの傷つきやすさと、大人にできる関わりが書かれています。
出版社が公表している目次は、次の5章で構成されています。
- 子どもが「安心感・自己肯定感」を持つためには
- 「話す」より実は大事な「聞く・見守る」
- 子どもとのコミュニケーションをおざなりにしないで
- 子どものこころを守るために知っておきたいこと
- 大人のこころだって守らないといけない
日常の声かけや話の聞き方から、自傷行為や自殺願望といった重いテーマまで扱われています。子どもを支える大人自身のこころにも目が向けられている点が、この本の特徴です。
出版社によると、2025年12月時点で発行部数は6万部を超えています。看護職に限らず、子どもと関わる多くの大人に選ばれているロングセラーです。
| 書名 | 児童精神科の看護師が伝える 子どもの傷つきやすいこころの守りかた |
|---|---|
| 著者 | こど看 |
| 出版社 | KADOKAWA |
| 発売日 | 2023年11月22日 |
| ページ数 | 192ページ |
| 定価 | 1,540円(税込) |
| ISBN | 9784046065360 |
| 公式情報 | KADOKAWA公式ページ |
この本をおすすめしたい3つの理由
1.子どもと長く関わる「看護師」の視点で書かれている
医師の診察や保護者の子育てとは少し異なり、看護師は子どもの生活に近いところで関わります。
食事をする時間、眠れない夜、学校や家族の話をする時間。処置や診察の場面だけでは見えにくい姿に出会えるのが、病棟看護師という立場です。
本書は、その立場で子どもたちと関わってきた著者が書いています。看護師や看護学生にとって、自分たちの仕事と重ねながら読みやすい背景があります。
2.「何を言うか」より先に、話をどう受け止めるかを考えられる
子どもが悩みを話したとき、大人は解決してあげたくなります。
しかし、すぐに助言されたり、気持ちを否定されたりすると、子どもは続きを話せなくなることがあります。話を聞くつもりが、いつの間にか大人が納得する答えを求めてしまうこともあります。
本書では、子どもと接するときの姿勢が「おすしさいこうかよ」という覚えやすい言葉にまとめられています。子どもとの会話がうまくいかないとき、自分の聞き方を振り返る手がかりになります。
3.子どもを支える大人のこころも置き去りにしない
いつでも落ち着いて、子どもの話を最後まで聞ければ理想的です。ただ、大人にも余裕がない日があります。
不安や焦り、疲れが強いときほど、言葉がきつくなったり、早く結論を出したくなったりします。大人のこころの状態を無視したまま、望ましい関わりだけを求めても長くは続きません。
目次の最後に「大人のこころだって守らないといけない」という章が置かれていることからも、子どもと大人の両方を支えようとする本であることが分かります。
小児看護で考えたいこと
「いい子にできた」だけで終わらない
処置の前に泣かず、説明にうなずき、言われたとおりにできる子どもは、「協力的」と捉えられやすいものです。
けれど、その子が怖くなかったとは限りません。大人の期待や不機嫌を感じ取り、自分の気持ちを出さないようにしていることもあります。
できたかどうかを評価するだけでなく、そのとき子どもが何を感じ、どのように体験していたのかを見る。本書のテーマは、そうした小児看護の視点にもつながります。
話してもらうことより、話せる関係をつくる
看護師は、限られた時間の中で必要な情報を得なければなりません。そのため、質問が続き、会話が問診のようになることがあります。
子どもが今は話したくないこと、うまく言葉にできないこと、まだ自分でも分からないこともあります。黙っている時間を急いで埋めず、話せるようになったときに受け止めてもらえると思える関係をつくることも、看護師にできる支援です。
こんな人におすすめ
- 子どもへの声かけや話の聞き方に迷うことがある人
- 子どもが黙ってしまうと、質問や助言を重ねてしまう人
- 小児看護や児童精神科に関心のある看護師・看護学生
- 子どもの行動の背景にある気持ちを考えたい人
- 子どもと関わる保護者、教員、保育・福祉職
- 子どもを大切にしたいのに、自分の余裕がなくなることに悩んでいる人
192ページの一般向け書籍で、専門書を読み込む前の入口としても手に取りやすい一冊です。
医療の専門書とは使い分けたい
本書は、子どもとの日常的な関わりや、大人の姿勢を見直すための読み物です。児童精神科の診断や治療、自傷・自殺の危機があるときの専門的な評価方法を詳しく学ぶ本ではありません。
そうした知識を深めたい場合は専門書や研修も必要ですが、「子どもの言葉をどのように受け止めるか」を考え始める一冊として、看護師にも一般の大人にも勧めやすい内容です。
あわせて読みたいブログ記事
本書の内容を小児看護の実践とつなげて考えたい人には、次の記事もおすすめです。
子どもの意見を聴くこと、怖さや痛みを必要以上に大きくしないことは、子どものこころを守る関わりにもつながっています。
まとめ
『児童精神科の看護師が伝える 子どもの傷つきやすいこころの守りかた』は、子どもへの正しい言葉を覚えるための本というより、自分がどのように子どもの声を聞いているかを見直すための本です。
子どもに何を言えばよいか迷ったとき、声かけの種類を増やす前に、子どもが安心して話せる相手になれているかを考えてみる。
「きちんと聞いているつもりなのに、うまく届かない」と感じている人が、子どもとの関わりを振り返る入口として選びやすい一冊です。
おわり。

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