関連図は何のために書くのか|患者をまるっと見るために

看護学生にとって、関連図は苦手意識を持ちやすい課題のひとつではないでしょうか。

情報が多い。
どこから線を引けばいいかわからない。
書いているうちに、どんどんごちゃごちゃしていく。
何時間もかけたのに、結局何が言いたい図なのかわからなくなる。

そんな経験をした人もいるかもしれません。

正直に言うと、私自身、関連図があまり好きではありません。

もちろん、関連図そのものに意味がないと思っているわけではありません。
患者さんの病態、症状、治療、生活、心理面、家族背景などをつなげて考えるためには、関連図が役立つこともあります。

ただ、関連図を書くことが目的になってしまうと、少し違うのではないかと思っています。

スポンサーリンク

関連図は「完成させること」が目的ではない

関連図というと、どうしても「きれいに書かなければいけない」「正しく線を引かなければいけない」と考えてしまいがちです。

でも、本来の目的は、見栄えのよい図を完成させることではありません。

患者さんに起きていることを、ばらばらの情報として見るのではなく、つながりの中で理解すること。
それが関連図の大切な役割だと思います。

たとえば、食欲がない患者さんがいたとします。

食欲低下だけを見ると、「食事摂取量が少ない」という情報になります。
でも、その背景には、痛みがあるのかもしれません。
吐き気があるのかもしれません。
治療の副作用が影響しているのかもしれません。
気分の落ち込みや不安が関係しているのかもしれません。
家族に心配をかけたくなくて、無理に食べようとしているのかもしれません。

このように、ひとつの情報の周囲には、いくつもの要因が関わっています。

関連図は、そうした情報同士のつながりを見える形にするための道具です。

「頭に入っているなら、それでいい」

私が認定看護師教育課程にいた頃、恩師から言われた言葉があります。

「関連図なんか書けなくても、頭に入っているならそれでいい」

この言葉は、今でも印象に残っています。

もちろん、学生の課題として関連図を書くことには意味があります。
頭の中で考えていることを、他者に見える形にする練習になるからです。

けれど、臨床の現場で大切なのは、関連図という成果物そのものではありません。

患者さんの状態をどう理解しているか。
どの情報とどの情報がつながっていると考えているか。
今、何を優先して見る必要があるのか。
どのような看護が必要だと判断しているのか。

それらが頭の中で整理されていて、実践につながっているなら、紙にきれいな関連図が描けるかどうかだけが重要なのではありません。

関連図は、あくまで思考を整理するための方法のひとつです。

関連図を書く目的

では、関連図は何のために書くのでしょうか。

大きく分けると、目的は3つあると思います。

1つ目は、患者さんをまるっと見るため

看護では、病気だけを見ていればよいわけではありません。

疾患があり、症状があり、治療があります。
そこに、生活があります。
家族があります。
仕事や学校があります。
不安や希望があります。
その人がこれまで大切にしてきたこともあります。

関連図は、こうした情報を一つひとつ切り離して見るのではなく、ひとりの患者さんの中でどのようにつながっているのかを考えるために使います。

たとえば、心不全の患者さんであれば、呼吸困難、浮腫、倦怠感、活動量の低下、食事制限、内服管理、不安、再入院への心配などが関係しているかもしれません。

小児であれば、疾患や治療だけでなく、発達段階、遊び、学校生活、きょうだい、親の不安、処置への恐怖なども関わってきます。

患者さんを「疾患名」や「看護問題」だけで見るのではなく、その人全体として理解する。
そのために関連図があります。

2つ目は、情報のつながりを考えるため

看護学生の記録では、情報がたくさん並びます。

バイタルサイン。
検査データ。
症状。
治療内容。
内服薬。
既往歴。
生活背景。
家族構成。
患者さんの発言。

ただ、情報を集めただけではアセスメントにはなりません。

大切なのは、それぞれの情報がどのようにつながっているのかを考えることです。

なぜこの症状が出ているのか。
この検査値の変化は、どの病態と関係しているのか。
この治療は、患者さんの生活にどんな影響を与えているのか。
この不安は、どこから生じているのか。
この家族の反応は、患者さんの療養にどう関係しているのか。

関連図を書くことで、情報を「点」ではなく「線」として見やすくなります。

線でつなぐこと自体が目的なのではありません。
線を引くときに、「なぜここがつながるのか」と考えることに意味があります。

3つ目は、看護の優先順位を考えるため

患者さんには、たくさんの課題があることがあります。

痛みもある。
眠れていない。
食事も進まない。
不安も強い。
家族も疲れている。
退院後の生活にも心配がある。

このようなとき、すべてを同じ重さで考えると、何から関わればよいのかわからなくなります。

関連図を書くと、どの問題がほかの問題に影響しているのかが見えやすくなることがあります。

たとえば、痛みが強いために眠れない。
眠れないために日中の活動量が落ちている。
活動量が落ちることで食欲も低下している。
食べられないことで体力が落ち、不安も強くなっている。

このようにつながりを考えると、まず痛みの緩和を優先する必要があるかもしれません。

もちろん、いつも単純に決められるわけではありません。
でも、関連図は「何を先に見るか」「どこに介入すると全体が少し楽になるか」を考える助けになります。

関連図が苦しくなる理由

関連図が苦手な学生は少なくありません。

その理由のひとつは、関連図に「正解」があるように感じてしまうことだと思います。

この線は合っているのか。
この位置でよいのか。
この情報も入れた方がよいのか。
先生に違うと言われないか。

そう考え始めると、関連図を書くこと自体が苦しくなります。

でも、同じ患者さんを見ていても、どこに注目するかによって関連図は変わります。

病態を中心に整理する人もいます。
生活への影響を中心に考える人もいます。
心理面や家族関係を丁寧に見る人もいます。
退院支援を意識してまとめる人もいます。

どれが唯一の正解というより、その人が何を大切に見ようとしているかが表れます。

大切なのは、きれいに線を引くことではありません。
なぜその情報とその情報をつなげたのかを、自分の言葉で説明できることです。

関連図は「患者さんを問題だらけにする道具」ではない

関連図を書くときに注意したいこともあります。

それは、患者さんを問題の集まりとして見てしまうことです。

疾患。
症状。
リスク。
不安。
ADL低下。
セルフケア不足。
家族の負担。

こうした情報ばかりを並べていくと、患者さんの姿が「問題だらけの人」のように見えてしまうことがあります。

でも、患者さんには問題だけでなく、力もあります。

できていること。
大切にしていること。
支えてくれる人。
これまで乗り越えてきた経験。
楽しみにしていること。
本人なりの対処方法。

そうした情報も、患者さんを理解するうえで大切です。

関連図を書くときは、困っていることだけでなく、その人が持っている力や支えも見ていく必要があります。

患者さんをまるっと見るというのは、病気や問題だけを見ることではありません。
その人の生活、思い、強みも含めて見るということです。

描くことを目的にしない

関連図は、描くことを目的にすると苦しくなります。

大きな紙に情報を並べる。
矢印をたくさん引く。
色分けをする。
見た目を整える。

それ自体が悪いわけではありません。
見やすく整理することも大切です。

ただ、見た目を整えることに時間を使いすぎて、患者さんを考える時間が減ってしまうなら、本来の目的から少し離れてしまいます。

関連図は、患者さんを理解するための道具です。
看護を考えるための道具です。
自分の思考を見える形にするための道具です。

道具なので、使い方が大切です。

関連図があるから患者さんを理解できるのではありません。
患者さんを理解しようとする過程で、関連図が助けになることがあるのです。

学生に伝えたいこと

関連図が苦手でも、看護に向いていないわけではありません。

線を引くのが苦手でも、患者さんをよく見ている学生はいます。
図にするのは苦手でも、患者さんの変化に気づける学生はいます。
うまくまとめられなくても、その人なりに一生懸命考えている学生もいます。

だから、関連図がうまく書けないことで、自分を責めすぎなくてよいと思います。

ただし、「苦手だから意味がない」と切り捨てるのも、少しもったいないです。

関連図を書く過程で、見えてくるものがあります。

この症状とこの生活の困りごとはつながっていたのか。
この不安は、病状そのものよりも見通しが立たないことから来ているのか。
この家族の疲れは、患者さんのケアにも影響しているのか。
この患者さんには、問題だけでなく支えになっているものもあるのか。

そうした気づきがあるなら、関連図を書く意味はあります。

おわりに

関連図は、きれいな図を完成させるための課題ではありません。

患者さんに起きていることを、病態、症状、治療、生活、心理、家族、本人の思いなどのつながりの中で考えるための道具です。

個人的には、関連図があまり好きではありません。
それでも、関連図を書く過程で患者さんの見え方が変わることはあると思っています。

大切なのは、描くことを目的にしないことです。

関連図がうまく書けることよりも、患者さんをどう理解しようとしているか。
どの情報を大切に見ているか。
その理解を、どのような看護につなげようとしているか。

そこに目を向けることの方が、ずっと大切です。

関連図は、患者さんをまるっと見るための道具です。

そして、その道具を使う目的は、紙の上にきれいな図を作ることではなく、目の前の患者さんを少しでも丁寧に理解することなのだと思います。

コメント

タイトルとURLをコピーしました