緩和ケアは「終末期になってから受けるもの」と思われがちですが、実際はもっと幅広いケアです。対象は患者さんだけでなく家族も含み、つらさを早い段階から和らげて生活の質(QOL)を支えます。この記事では、緩和ケアの対象・開始時期・支援内容と、相談の目安までわかりやすく解説します。
緩和ケアとは
この記事でわかること
- 緩和ケアの対象(誰のためのケアか)
- 緩和ケアはいつから始めるのか
- 緩和ケアで扱う「つらさ」の範囲
- どこで受けられるのか、相談の目安
- よくある誤解(終末期/治療をやめる/医療用麻薬など)
対象(誰のためのケアか)
緩和ケアの対象は、成人・小児を問わず、生命を脅かす病気に関連する問題に直面している患者さんと、その家族です。痛みなどの身体症状だけでなく、心理面、社会生活上の困りごと、価値観に関わる苦痛も含めて捉えます。
いつから始めるのか
緩和ケアは「病気が進行してから始めるもの」ではありません。がんの分野では、法律や国の方針の中で、緩和ケアが診断の時から適切に提供されることが示されています。
治療(手術、抗がん薬、放射線など)と緩和ケアは対立するものではなく、同時に進むことがあります。つらさが強くなってから一気に対応するより、早めに困りごとを言葉にして対策を積み上げるほうが、生活を保ちやすくなります。
何をするのか(支援の範囲)
緩和ケアは、薬の調整だけではありません。症状緩和と生活の支えをセットで考えます。
身体のつらさ
- 痛み、息苦しさ
- 吐き気、食欲低下
- 便秘、下痢
- 不眠、倦怠感
- せん妄、口腔トラブル など
こころのつらさ
- 不安、落ち込み
- 恐怖、いらだち
- 先の見通しが立たない苦しさ など
社会生活上の困りごと
- 仕事・学業との両立
- 通院や生活動線の課題
- 経済面、制度の利用
- 家族の負担(介護力、サポート不足) など
価値観に関わる苦痛(スピリチュアルな苦痛)
- 生きる意味や役割の喪失感
- 大切にしてきたことが続けられない苦しさ
- 「自分らしさ」が保てない感覚 など
具体的に行われる支援の例
- 症状緩和:症状の評価、多職種連携、薬剤調整の相談、薬以外の工夫(体位・環境調整など)
- セルフケア支援:家庭での工夫、受診目安、悪化サインの共有
- 気持ちの支え:不安が強いときの対応、必要に応じた専門職への橋渡し
- 生活の調整:仕事・家事・介護・通院を回すための調整、制度の相談
- 家族支援:家族の不安や疲労の把握、相談先の確保
- 意思決定支援:治療の選択、療養場所の希望、今後の見通しを一緒に考える
どこで受けられるのか(外来・病棟・在宅)
- 外来:通院しながら症状や生活の困りごとを継続的に整える
- 入院:入院中の症状緩和、治療との調整、退院後の生活設計
- 在宅:訪問診療・訪問看護などと連携して生活の場で支える
- 相談窓口(がん領域):がん相談支援センターなど、療養や制度の相談ができる場
よくある誤解
誤解:緩和ケアは終末期だけ
緩和ケアは終末期に限りません。つらさや困りごとがあるなら、早い段階から対象になります。
誤解:緩和ケアは「治療をやめる」こと
緩和ケアは治療を否定するものではありません。治療と並行して生活の質を支えるために行われます。
誤解:医療用麻薬を使うのは最終段階
医療用麻薬は、必要に応じて痛みを和らげるために用いられます。使うかどうかは状態と目的で検討され、副作用対策も含めて調整します。
相談の目安
次のような状況があれば、主治医、緩和ケア外来、院内の緩和ケアチーム、在宅なら訪問診療・訪問看護、相談窓口などに相談する価値があります。
- 痛み、息苦しさ、吐き気、不眠などが続き、日常生活に支障がある
- 不安や落ち込みが強く、判断や生活の調整が難しくなっている
- 仕事・家事・介護など、生活が回らなくなってきた
- 家族の負担が大きい
- 治療の選択や療養場所について、考える材料をそろえたい
まとめ
緩和ケアは、患者さんと家族の生活の質(QOL)を支えるために、つらさを早期から評価し、和らげていくケアです。終末期だけのものではなく、治療と並行して行われることもあります。身体症状だけでなく、気持ちや生活の困りごと、価値観に関わる苦痛まで含めて支える点が特徴です。
参考資料(公的機関・一次情報)
- WHO:Palliative care(Fact sheet)
- e-Gov法令検索:がん対策基本法
- 厚生労働省:診断時からの緩和ケア(資料)
- 国立がん研究センター がん情報サービス:冊子「緩和ケア」
- がん情報サービス:がん相談支援センターとは

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