呼吸回数は、バイタルサインの中でも軽視されがちです。
数えるのに時間がかかることや、機器で自動表示されない場面があることから、忙しい現場では後回しになりやすい指標でもあります。血圧やSpO₂など、ひと目で確認できる数値に意識が向きやすいのも無理はありません。
しかし呼吸回数は、状態変化をいち早く映し出すことがある、非常に重要な情報です。この記事では、呼吸回数を「なぜ測るのか」「どう意識するのか」という視点から整理します。
呼吸回数が軽視されやすい理由
呼吸回数が測られにくいのには、いくつかの理由があります。
- 数えるための時間が必要で、業務が立て込むと後回しになりやすい
- 本人が意識すると呼吸が変わり、測定しづらい
- 血圧やSpO₂のように自動で表示されない場面がある
- 「SpO₂が保たれていれば大丈夫」と判断してしまいやすい
こうした背景があるため、呼吸回数は重要だと分かっていても、日常的な優先順位が下がりやすい指標になっています。
呼吸回数は「状態」を映すバイタル
呼吸回数は、単に酸素化の状態だけを反映しているわけではありません。
身体が負荷を感じているときや、代償が働いているとき、呼吸は比較的早い段階で変化します。発熱や痛み、不安、疲労など、さまざまな要因が呼吸回数に影響します。
そのため呼吸回数は、呼吸器の状態に限らず、全身の負担や余裕のなさを知る手がかりになります。
SpO₂が正常でも安心できない場面がある
SpO₂は重要な指標ですが、「SpO₂が正常=安全」とは限りません。
SpO₂が保たれている段階でも、呼吸の負担が増えていたり、本人が息苦しさを感じていたりすることがあります。こうした状態は、SpO₂だけでは見えにくいことがあります。
このような場面で、呼吸回数の増加は「何かが起きている」ことを知らせるサインになります。
呼吸回数は「変化」として捉えるほど価値が出る
呼吸回数は、単発の数値だけを見るよりも、変化として捉えることで意味が深まります。
- 普段より増えていないか
- 時間経過でさらに増えていないか
- 体位や活動でどの程度変動するか
- 声かけや安静で落ち着くか
呼吸回数の測定は、「正確な数字を当てる」ことが目的ではありません。いつもと違うという感覚を、共有できる情報にすることが大切です。
「数えること」自体が看護になる
呼吸回数を数えるという行為は、単なる測定ではありません。
数えている間に、呼吸の深さやリズム、努力呼吸の有無、会話のしやすさ、表情の緊張など、数値では表しきれない情報が自然と目に入ってきます。
呼吸回数は、観察のプロセスそのものを伴うバイタルサインです。
日頃から意識することで、測定が生きてくる
呼吸回数は、「完璧に毎回測る」ことを目標にすると、現場では続きにくくなります。
一方で、日頃から呼吸の様子に意識を向けていないと、変化そのものに気づくこともできません。
普段の呼吸のリズムや落ち着き方を、なんとなくでも把握しているからこそ、「あれ、いつもと違う」という感覚が生まれます。
そのうえで、次のような場面では意識して呼吸回数を測ることが、状態変化を捉える手がかりになります。
- いつもと様子が違うと感じたとき
- 発熱や痛み、不安が強いとき
- 活動で息切れが出るとき
- 呼吸器症状があるとき
- 状態が変わりやすいタイミング(処置前後など)
「測れるときに測る」のではなく、日頃から呼吸に目を向け、その中で「変化を見逃したくないときに、きちんと測る」と考えると、呼吸回数は現場で自然に優先順位が上がっていきます。
まとめ|呼吸回数は、最もシンプルで正直なサイン
呼吸回数は、軽視されがちですが、状態変化をいち早く反映することがある重要な指標です。
SpO₂などの数値だけでは見えにくい負担や不安が、呼吸回数や呼吸の様子として現れることがあります。
呼吸回数を数えることは、数字を取る作業ではなく、「今の呼吸」を丁寧に見る看護そのものです。日頃から意識を向けることで、必要な場面での測定が生きてきます。

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