このタイトル。
みなさんはどう思うでしょうか?
個人的には字面だけならめちゃくちゃその通りだと思う。
百聞は一見に如かずとは言ったものでやっぱりどれだけ勉強して知識を詰め込んでも実経験には敵わない。
それは重々承知の上で自分の思いを書いておく。
実はこのタイトル。
blog読者から頂いた質問の一つ。
もう少し詳しく言うと
「がん患者経験が少ないのに緩和ケア認定看護師としての実績はあるんですか?勉強して資格取っても経験が少なかったら意味なくないですか?」
という趣旨のもの。
ふむふむなるほど。
これに関しては過去のblog記事で少し触れたことあるけどあらためて整理しておく。
少し前に「がん看護経験1年未満で緩和ケア認定看護師を目指してみた」という短期連載シリーズをまとめたのだが、自分はがん看護の経験をほとんどせずに緩和ケア認定看護師になった。
そこに関しては自分でも思うところはあった。
なので緩和ケア認定看護師になってからあらためてがん看護の実績を積むという選択をした。
それでも自分のがん看護経験は認定看護師になる前後合わせて約3年。
3年やれば十分ととるかたった3年ととるかは人それぞれだと思う。
ただ個人的にこの3年という数字にそれほど意味はないと思っている。
だって3年だろうが10年だろうが結局自分の経験は「小児がん」の経験でしかないんだから。
がん看護の経験って具体的にどういう経験のことをいうんだろう。
一般的な話をすると高齢者のがん看護なんだろうけど。
それすらも結局「呼吸器系のがん」「消化器系のがん」「腫瘍系のがん」などなど細分化されるわけで。
大きな話で言えば「抗がん剤を使う」とか「集学的治療(化学療法・放射線療法・手術療法)を駆使する」とか確かにがん看護ならではの共通点はある。
ただその共通点を学ぶという意味だけで言えば正直3年で十分だと思っている。
問題はその共通点の外側。
個々の疾患に合わせた苦痛緩和や生活援助について。
あらためて言うがそういう共通点の外側に関しては本当に細分化されているのでどこまで経験しても十分なんて領域には到底たどり着けない。
特に小児科を専門としている自分にとっていわゆる一般的ながん看護を網羅することはできない。
逆もまた然りで大人のがんばかり見ている人は小児がんの患者を十分に看護できるとはなかなか言えないと思う。
じゃあ「緩和ケア認定看護師」なんていっても結局経験した中でのごく一部の患者のためにしか意味のある実践はできないのか?
と問われるとそんなわけはないよね。
念のために明言しておくけど看護師の役割は「生活援助」。
看護師は病気を治す人じゃない。
看護師は病気を持ちながら生活する人たちを支える人。
となれば緩和ケア認定看護師はそういう人たちに対して、心身ともに苦痛緩和を図りながら生活援助の方法を組み立てたり、患者・家族と相談しながら負担の少ないケア方法を統一したり、そういう技術の専門家だと個人的には思っている。
とは言ってみたが、いくら細分化されていたとしてもやはりがん看護の経験が長いに越したことはないと思う。
共通点が多い方が対応しやすいのは確かだと思うから。
院内の緩和ケアチームなど施設内を横断的に活動する緩和ケア認定看護師ならそういう役割や働き方を期待されるだろう。
じゃあ自分の場合はどうだ?
自分の場合は初めから小児科しか考えていない。
なおかつ大人の看護をする予定はない。
となれば一般的ながん看護よりもニッチな領域で尖った経験があれば十分。
さらにいうと自分の目標はその先。
がん看護を専門とする緩和ケア認定看護師は全国にたくさんいるが非がんを専門とする緩和ケア認定看護師はまだまだ少ない。
特に子どもの非がん患者に対する緩和ケアなんて近年までほとんど見向きもされていなかった。
だからこそ自分はがんや非がんに関係なく、「すべての子どもたちが安心して安全に過ごせる」ことを目標に掲げている。
もし自分が病院の緩和ケアチームに属する看護師なら「なにいってんだこいつ」で終わる話かもしれない。
でも自分にはやりたいことが明確にある。
だから病院という枠組みを外れ、緩和ケアチームで期待されていた役割から抜け出してやりたいことをやるために前の仕事を辞めた。
途方もない目標なので達成できる日が来るかは正直わからない。
でもほんの少しでも成果を残すことができれば次に続く人は必ず現れる。
まさに自分が先人の作ってきた道の上を進んでいるように。
そうしてつないだ先にすべての子どもたちにとって安心で安全な生活がおとずれるならそれでいいと思っている。
一般的ながん看護をメインの役割にする緩和ケア認定看護師は日本中にたくさんいる。
なのでその役割はその人たちに任せる。
自分はそういう王道を行かずに芽が出るかもわからない邪道を行く。
芽が出ずともせめて土を耕すぐらいのことができれば。
いつかきっと誰かが花を咲かせてくれると思うから。
おわり。
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