「3つのF」と神経系
- 闘争(Fight-戦う、立ち向かう反応)
トラウマや恐怖を克服できるような強さを手に入れたとしても戦いには終わりがないことに気づいてしまう。
交感神経系の働き。 - 逃走(Flight-逃げる、回避する反応)
あらゆる危険から逃げたり避けたりすることで安心を得ようとするが、あらゆるものを恐怖の対象に感じてしまい、自分の人生を狭くしてしまう。
交感神経系の働き。 - 凍結(Freeze-固まる、動けなくなる反応)
特に幼い子供に多い。
フリーズ時には交感神経と副交感神経が同時に興奮して、アクセルとブレーキを同時に踏んでいるような感覚になるため、自律神経系の障害や心身症的な症状が現れやすい。
54321法
今ここで見えるもの・聞こえるもの・感じるものを、最初は5つずつ口に出し、次に4つずつ、3つずつ…最後に1つずつ言う。
外界集中型自己催眠技法。
セーフ・プレース・エクササイズ
トラウマのきっかけに遭遇したときに行う療法。
この方法を使うことで「つながり」がよくなり、身体の中に安心感が得られる。
援助希求
「助けてほしい」と感じたときに「助けて」と言える能力。
安全・安心な人と「つながれる」ようになること、安全・安心な人に「助けて」と言えるようになることが大事。
トラウマからの回復-3本柱-
- 心理教育
トラウマとは何か、それがどう現在に影響するかを知る - セルフケア
自分を大切にするセルフケアの方法を身につける - スキルの構築
生きていくための多様なスキル(感情表現や人間関係など)を身につける
DESNOS
A-Eまでの5つの症候として整理することで、慢性化したトラウマが引き起こす状態を理解するための診断指標。
- A:感情覚醒の統御における変化
慢性的な感情、特に怒りの調整障害、自傷や自殺行動、衝動的で危険な行動の制御障害。 - B:注意や意識における変化
健忘や解離。 - C:身体化(一種の解離症状でもある)
頭痛や腹痛、全身の痛みなど。 - D:慢性的な人格変化
自己認識の変化、加害者に対する認識の変化、人が信じられない、加害や被害をくり返してしまうという対人関係の変化。 - E:意味体系における変化
絶望感と希望の喪失、自分を支えていた信念の喪失。 - プラスワン:広い意味での嗜癖(アディクション)
アルコール・薬物依存、プロセス嗜癖(行為・行動への依存)。
複雑性PTSD
WHOによる「ICD-11」が30年ぶりに改訂され、2018年6月に公表された。
そこに「複雑性PTSD」が追加された。
その内容として、主要三症状に①感情の調節障害、②否定的な自己認知、③対人関係の問題、の3つが加えられた。
自傷行為
自傷というのは、感情の調節を身につけることができずに育った人が、自分にとっての不快な感情を何とか自分でコントロールしようとする試み。
自咬、ひっかき、抜毛、リストカット、薬物使用など。
もともとは不快な感情をコントロールするためにはじめた行為が、いっそう自分を傷つけ、自分をコントロールできないことにつながってしまう。
被災者と地域の回復プロセス
被災者が日常生活を取り戻し、コミュニティが機能を回復するまでの一般的なプロセス。
- 英雄期(災害直後)
多くの人が、自分の危険を顧みず勇気ある行動をとる。 - ハネムーン期(1週間-6か月)
大変な体験を乗り越えた被災者が強い連帯感を感じ、助け合いながら危機を乗り越えていく時期。 - 幻滅期(2か月-1,2年)
被災者の忍耐が限界に近づく。
支援が行き届かないことや行政サービスへの不満、やり場のない怒りなど。
ケンカやトラブルが増える。
同じ被災者でも状況がさまざまに異なることから、地域の連帯も失われがちになる。 - 再建期
被災地に「日常」が戻りはじめ、被災者も生活の建て直しに目を向けるようになる。
復興ムードが高まる一方でそこから取り残される人も出る。
これは「鋏状格差」と呼ばれ、最初は同じ地点からスタートしたはずが、はさみを開いたような形に格差が広がっていくこと。
サイコロジカル・ファーストエイド
略してPFA。
心理的応急処置の意味で、大災害や大事故の直後に被災者・被害者に提供できる心理的支援をまとめたマニュアル。
WHO版PFA(日本語)は国立精神・神経医療センターの「災害時心の情報センター」のサイトで提供されている。
もっと危険の少ない支援
「遊びを提供する」活動は様々な支援の中でも一番危険が少なく、かつ有効とされている。
子ども時代に自身が傷ついた経験がある場合は、提供する側にとっても癒される体験となる。
ソマティック・エクスペリエンシング・アプローチ
身体と神経系の統合をベースにしたトラウマ技法。
そのベースには「トラウマとは、ある出来事に対して神経系がどう反応するかという問題だ」という考え方がある。
BASIC-PHにおける連続性
- 認知的・意識的連続性
一定の規則のもと生活が営まれ、こうすればこうなるといった論理や、日々の現実がゆるがないこと。 - 社会的・対人関係における連続性
過程・職場・学校などで同じ人にくり返し会えること。 - 機能的連続性
職業や家庭内・地域社会での立場など、自分が一定の役割を持ち続けていること。 - 歴史的連続性
過去から現在に至るまで、自分が自分だというまとまりを感じられること。
支援の中核となる能力(コア・コンピテンシー)
コア・コンピテンシーの原理原則の要約
- トラウマへの気づき(トラウマ・アウェアネス)
- 安全の確立
- 選択とエンパワメント
- 強みを基礎とする(ストレングス・ベースト)
支援者の聴く姿勢
支援を求めてきた人に対して、支援者が「この話にこれ以上触れるのはよくない」と勝手な判断のもとに線を引くべきではない。
支援する人が「聞いてはいけない」と感じるとき、実はそれは支援者が「聞くに堪えない体験」と感じ、引き起こされる自分の感情を恐怖していることがある。
実際にはその「聞くに堪えない話」は「その人がすでに体験してきたトラウマ」である。
フラッシュバックや解離が起きている人の特徴
- それまでとは急に表情が変わり、苦しそうになったり、無表情になったりする
- 急にしゃべらなくなる
- 身体の動きが止まったり、何かを避けるような形になったり、何かから逃げるような形をとることがある
- 声をかけても反応しない、あるいは声をかけたり身体に触れたりすると、びくっとしたり叫んだりする
フラッシュバックが起きたときの対処法
- 落ち着いて、はっきりと穏やかな声で名前を呼ぶ
- 意思疎通が困難であれば、しばらく静かに待つ
- 席を外すことはせずに「私はここにいるので戻れるようになったら戻ってきてくださいね」などと声をかけて見守る
- 表情が戻ったり、むくっと起き上がるなどしたら「まわりを見てください」「私の顔を見られますか」というように声をかける
- 周囲を見ることによって、自分があのときではなく「今・ここ」にいることが認識できる
- 意思疎通ができるようになれば、「今・ここ」の感覚を強めるため、座ったまま足踏みをしてもらうなど、足がしっかりと地面についている(グラウンディング)ことを意識できるように手助けする
- ゆっくり深く呼吸できるよう声をかける
- 「ここは○○ですよ」「今日は〇月〇日ですよ」などと伝え、見当識の確認をする
- 可能なら水を飲んでもらうのもよい
フラッシュバックを起こしそうなとき
- 目を閉じない。怖いときは目を閉じたくなるが、目を閉じるとトラウマ記憶の中に入り込んでしまうので、目を開けて周囲を見る
- 「私は今ここにいる」「それは終わった、今の私は安全だ」「それは過去のことだ」などと宣言の言葉を口に出す
- 安全・安心の感覚とつながれるものを使う。好きな人形やぬいぐるみを手に取ったり、安心を象徴する絵やカードを手に取って眺める、イメージやキーワードを思い浮かべるなど。
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