アセトアミノフェンは言わずと知れた解熱鎮痛剤の一つ。
抗炎症作用の有無でNSAIDsと比べられることが多く、解熱鎮痛に対する薬剤の両翼を担っている。
アセトアミノフェンはNSAIDsに比べて副作用の面でかなり優秀。
今回はその副作用に関してちょっと誤解されている節が多々あるのではないかと感じる点についてまとめる。
アセトアミノフェンとNSAIDsの副作用。
アセトアミノフェンは肝機能障害(もしくは肝細胞壊死)。
NSAIDsは腎機能障害、胃腸障害、出血傾向。
というのをよく見ると思う。
何ら間違いではないしその通りなんだけど一つだけはっきりとさせておきたいことがある。
その副作用の起きる頻度って知ってますか?
ということ。
もちろん一概に言えるものではないことは承知の上だがそれでも言っておきたい。
まずはNSAIDsの方から。
NSAIDsが副作用を起こす機序はNSAIDsがCOXを阻害するから。
COXというのはプロスタグランジン(PG)を産生する元になるもの。
PGは炎症反応や痛みを強めたりする。
そのため「PGを産生するCOXの働きを阻害してしまえば痛み増強の誘因となるPGの産生を抑えられるので痛みが抑制される」というのがNSAIDsの主目的になるんだけどこのPGというのが曲者。
PGは炎症や痛みを強くするというあまり嬉しくない働きの反面、胃腸や腎臓を保護するという働きもしてくれる。
なので痛み止めとして効果を発揮してもらうためには「胃腸や腎臓の保護」といった働きを犠牲にしなければならない。
犠牲にするという言葉通り、痛みを抑えるためにはこの副作用とは必ず向き合わなければならない。
だからNSAIDsを使う時は初めから予防的に胃腸薬と一緒に飲むことが多いよね。
たぶん自分が処方されるときなんかも胃腸薬とセットで受け取ってると思う。
そして本題のアセトアミノフェン。
アセトアミノフェンの副作用は肝機能障害。
これがどういう機序で起きるか。
それは異常なほどの使いすぎが原因で起こる。
じゃあどれぐらい使いすぎれば起こるのか。
ざっくり言うと一般的に使用される量の10倍量以上飲めば“使いすぎ”となり肝細胞壊死が起こり得る。
一般的な使用量の10倍。
そんな量のアセトアミノフェンを飲むことなんてあるか?
という話。
アセトアミノフェンで起こる肝障害というのは「中毒性肝障害」という分類になる。
言葉の通り、度を越えた過剰摂取で薬物中毒状態になると肝障害がでますよということ。
つまりNSAIDsと違って主目的である解熱鎮痛作用と引き換えに必ずしも起こるわけではない。
なので基本的には医師からの処方の範囲内で肝機能障害が起こることはほとんどないと思っていていい。
ただ基礎疾患や全身状態によってはリスクが高まるから常飲するなら注意する必要はあるし、市販の風邪薬なんかにも入ってるから知らない内に過剰投与になっていたとなる可能性は高いので気を付けないといけない。
アセトアミノフェンとNSAIDsの副作用の違いについてなんとなく理解してもらえただろうか。
アセトアミノフェンは肝機能障害のリスクがあるから。
NSAIDsは腎機能障害、胃腸障害、出血傾向のリスクがあるから。
というのはその通りなんだけどその副作用が起こるリスクが全然違うことは知っておいてほしい。
緩和ケアのちょっとタメになる話VOL.8でもちらっと書いたけど
アセトアミノフェンの副作用はほとんどないと思っていい。
基礎疾患や全身状態によってとは書いたけど自分が出会った緩和ケア医はみんな「アセトアミノフェンの副作用なんてあってないようなもん」と言っていた。
終末期患者を相手にしている緩和ケア医がそう言うんだから適切に使用すればほぼ問題なく使えるということ。
もちろん絶対はないので長期内服になるなら肝機能のフォローは必要だと思うけど。
アセトアミノフェンを使う時に「肝機能がどうたらこうたら~」っていう人はけっこういる。
確かに教科書的にはその通りなんだけど副作用の出現するリスクやその発生機序まできちんと把握できてる人はどのくらいいるのだろうか。
文面だけ捉えて「副作用=起こる可能性がある」だけだとちょっと惜しい。
アセトアミノフェンに限らず、作用機序からなぜ副作用が起こるのかという一連の流れを意識する癖をつけとくと勉強が楽しくなると思うので、今回のアセトアミノフェンとNSAIDsの副作用をぜひその一歩目にしてほしい。
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