みなさんは経験したことがないだろうか。
どこかしらがめちゃくちゃ痛いのに
「すぐ治るから我慢しときな」
って言われたことが。
もしくは誰かが言っている場面を。
個人的経験としては術後の患者に対して
「術後の痛みは仕方ない。少しずつ良くなるから我慢しよ。」
なんて言葉を聞いたことがあり耳を疑った。
術後疼痛は特に一過性の痛みなんだから積極的に鎮痛剤を使うべき状況。
なぜ我慢しないといけないの?
もちろんその場面では我慢なんかさせずにすぐに鎮痛剤を使用した。
医療者の中には何故か鎮痛剤をあまり使いたくない人たちがいる。
医師の指示で使用可能であるにもかかわらず使いたがらない看護師もいる。
おそらくそういう人たちは
「副作用が~」
とか
「クセになると~」
とか言うと思う。
でもそういう人たちの多くは経験則や憶測で鎮痛剤について語っていることが多く、鎮痛剤について本格的な学習はしていないことが多い。
というか学習していたらよっぽどのケースじゃない限りそんな言葉は出てこない。
確かにNSAIDsやオピオイドを使う場合は、副作用が問題になるケースが少なからずある。
もちろん副作用の観察は必要だが、まずは痛みを取ることを最優先に考えるというスタンスを持つことが大切だと考える。
例えばオピオイドの乱用などにより本当に副作用が問題となっている場合はそもそもとして医師と連携しながら鎮痛薬の使用方法を検討する必要がある。
鎮痛剤を我慢することになる要因の一つに日本人であるということもある。
日本は“我慢が美徳”とされる文化がある。
自分も日本人なのでその気持ちは十二分にわかるが痛みに関しては本当に我慢しないほうがいい。
我慢しないほうがいい理由をここから記載する。
痛みの詳しい伝達経路の説明は省くが、痛みというのは傷害部位から神経を通り、脳に到達することで「痛い」と感じる。
この傷害部位から脳までの神経における痛みの伝達を抑制したり遮断したりしてどうにか脳に到達させない(もしくは到達するまでに痛み刺激を弱める)というのが鎮痛剤の役割になってる。
鎮痛剤を使わなければ、痛み刺激は何にも遮られることなく神経を通ってスムーズに脳まで到達する。
このスムーズに脳へ到達するというのが少々問題となる。
神経伝達というのはスムーズにいけばいくほどよりスムーズになるという性質がある。
つまり「くり返し伝達されることでその刺激を身体が覚える」のである。
これはスポーツの練習などと同じ仕組みで、練習をくり返すことにより神経伝達がスムーズになり本番でもベストパフォーマンスができるのと似ている。
痛み刺激もくり返されることでよりスムーズに伝達されるようになっていく。
しかし痛み刺激に関してはスムーズに伝達されてしまうと「より痛くなる」のでスムーズどころかできれば伝達されてほしくない。
ここで役に立つのが鎮痛剤。
スムーズな痛み刺激の伝達を鎮痛剤で抑えることにより身体が痛みの伝達を覚えるのを阻害することができる。
痛みも学習や運動と同じでくり返すことで身体が覚えてしまう。
一度身体が覚えるとそれをなくすのは少し時間がかかる。
それならば身体が覚えないように鎮痛剤で邪魔しておこう。
痛くなくなるまでは鎮痛剤でやり過ごそう。
それが鎮痛剤の使い方。
身体が痛みを覚えてしまうのを防ぐためにも鎮痛剤を使用して痛い時間を減らすことは非常に有用。
痛みというのは人間にとって最も苦痛となる症状の一つ。
医療者の思い込みや個人的感覚だけで患者に無意味な我慢をさせないように。
我慢はその時に苦しいだけではなく、苦しさを増悪させていく可能性もあるということを頭の片隅に置いておいてほしい。
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