【大切なこと】医学になくて看護学にあるもの

看護師をしていると“看護学”というのがどういう学問なのか悩む瞬間というのがたまにくる。

看護師をしている人なら共感してくれるのではなかろうか。

たまに話題になる“看護観”みたいな看護学ならではの言葉も存在するしね。

看護師の役割として明記されているのは「診療の補助」と「療養上の世話」。

診療の補助をするためには看護師は看護学だけではなく“医学”についても学ばなくてはならない。

時折、医学を追求する看護師に対して“ミニドクター”なんてほぼ悪口(だと個人的には思っている)が聞こえることもある。

医学と看護学。

その違いは明確なようで曖昧なようで。

個人的には医学は「疾患に対する学問」、看護学は「人間に対する学問」だと思っている。

いつどこで見たかはっきり覚えてないけれど、印象に残ったある医師の言葉がある。

「医学は身体の不調を元通りにするだけ。マイナスをゼロにするのが仕事。医学で何かをプラスにすることはできない。」

おおよそこんな感じの内容だったはず。

なるほど。

これは納得で個人的な医学の解釈とも合致している。

何の文句もない言葉だと思う。

ただ一つ勘違いしないでほしいのは、それは“医学”の話であって“医療”の話ではないということ。

例えばがんを患った患者がいたとする。

がんを治療するために化学療法や放射線療法、手術療法なんかを駆使して完治を目指すのは医学である。

そして半年後、無事にがんは完治したとする。

その場合、患者の身体はがんという不調から元通りに回復したので身体的にみるとマイナスがゼロになっただけである。

だが、本当にプラスはないのだろうか?

半年の闘病生活、がんを患ったことによるいろんな意味での喪失、それらを乗り越えて今そこに生きているという事実。

そこにプラスはないのだろうか。

さすがに「ない」という人はそう多くはないはず。

がんという大きな病気を乗り越えた経験というのはその後の人生の大きな糧になると信じている。

そしてその闘病生活を支える役割の大部分を担うのは看護師である。

そう思うと看護学は「マイナスをプラスにできる学問」だと言い換えることもできるのではないか。

自分が看護師ということもあり、願望も込めて。

願望ではあるが、少なくとも我々看護師はそう願って日々の看護実践をしているし、そのような看護実践を目指すべきだと思う。

つらく苦しい入院生活や闘病生活が少しでも意味のある時間だったと感じてもらえるように。

その後の人生がより豊かになるような経験となればいいと願いながら。

医学は「マイナスをゼロにするだけでプラスにできない」。

それは“疾患に対する学問”だから。

看護学は「マイナスをプラスにできる」。

それは“人間に対する学問”だから。

そして“医療”の話に戻るが、医療というのは医学も看護学も包括している。

何が言いたいのか自分でもわからなくなってきた。

言いたかったことは上述に加えて

「医師が駆使するものが医学」、「看護師が駆使するものが看護学」“ではない”ということが言いたかったのかな。

なんか医学と看護学の話になると“医師と看護師”の話に置き換える人ってよくいるんだけどそうじゃないと思うんだよね。

冒頭では「ミニドクターは悪口だ」なんて書いたけど看護師が医学を追求することそのものはなんら悪いことではない。

むしろそうであるべきとすら思う。

ただミニドクターと揶揄される人は看護学をないがしろにして医学ばかりを追いかける人なんだろうな。

看護師の一番の役割である看護学を活かした実践ができないといくら医学に長けていても看護師としては残念だと思う。

そら医師になれよとも言われるさ。

“医療者”としては医学も看護学もひっくるめてそれぞれの学問を駆使して患者に向き合うのが本来の姿のはず。

少なくとも看護師はそうだよね。

医学や看護学、なんなら薬学とかも含めていろんな学問を少しずつつまみ食いしながら実践する感じ。

働く場所によって必要な学問、知識に差はあれど基本的なスタンスは同じはず。

じゃあ医師はどうなのか。

「医学は身体の不調を元通りにするだけ。マイナスをゼロにするのが仕事。医学で何かをプラスにすることはできない。」

この言葉がどういう意図で言われた言葉なのかはわからない。

けれども単純に医学を医師に言い換えていい話ではないとは思う。

そして忘れてはならないのが医学は看護学およびほかの医療的学問の中でもトップクラスに高度で奥深い学問であるということ。

理想を言うと医師も医学だけじゃなくて看護学を学んでもっと患者に寄り添った医療を目指してほしいとは思う。

少なくともそう感じる医師を見る機会はある。

でも医学を専門とする医師にとって本業の医学をおろそかにできるはずもなく、ほかの学問に割ける時間も少ないだろう。

そしてやはり“診療を補助する看護師”と“診療をする医師”では責任の重さがまるで違う。

ここは決して忘れてはいけないところ。

とまぁなんかいったりきたりの文章になってしまった気もするが、医学と看護学の違いについて思うところを書いてみた。

あらためてだけど“医師と看護師の違い”ではなく“医学と看護学の違い”ね。

この違いを意識しながら“看護師として”実践してみると自分の実践を客観的に見ていろいろ思うところが出てくるんじゃないかなとか思ってみたりしたわけでした。

おわり。

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