【知っておいてほしい】緩和ケア病棟で働きたいあなたへ

少し前のつぶやき。

返事をした後にいろいろと反省。

したのだが、短くまとめられないならだらだら書いてやろうじゃねぇか。

せっかくblogがあるんだし。

ということでこっちにも書くことにした。

ただまぁ“大まかに知りたい”への丁寧な返答になっても面白味がなさそうなのでせっかくなら「緩和ケア病棟で働きたい!」と思っている人にとって少し参考になればいいなって思いながら書くことにする。

ちなみに学生さんに返答した“めちゃくちゃ長文”の内容はblogの最後にそのまま載せとくので気になる人はそこだけ見てもおっけい。

「こいつ学生さんになんて文章を送りやがるんだ…」

って失笑してもらって大丈夫です。

自覚してるので。

ということで本題に入るのだが先に少し保険をかけさせてもらう。

「緩和ケア病棟で働きたいあなたへ」なんてさも緩和ケア病棟のことよく知ってる風なタイトルにしてみたけど実のところ自分は緩和ケア病棟での勤務経験はない。

唯一の経験として緩和ケアCN教育課程で1か月ほど緩和ケア病棟に泊まり込みで実習をさせてもらっただけ。

なので内容として大きく間違ってはいないはずだが個人の経験2割と伝聞や知識として8割ぐらいのつもりで読んでほしい。

あくまで参考程度にしてもらえたら。

ではあらためて本題に入る。

まず“緩和ケア病棟で働きたいあなた”は緩和ケア病棟に何を期待して働きたいと思うのだろうか。

おそらくは「人生の最期を過ごす場所である緩和ケア病棟で患者さんの生活を支えたい」みたいなニュアンスの人が多いんじゃないかな。

少なくとも自分はそうだった。

そしてさらに言えば緩和ケア病棟は積極的治療をしないことがほとんどなので、ゆっくり穏やかな時間が流れていると思っていた。

これは一概に間違いとは言えないかもしれないが、正しいとも言い難い。

理由として緩和ケア病棟は大別して2種類に分けられるからである。

緩和ケア病棟として運営していくうえで届け出をするときに「緩和ケア病棟入院料」という算定が取れる。

この「緩和ケア病棟入院料」というのがなかなかに曲者で「緩和ケア病棟入院料1」と「緩和ケア病棟入院料2」の2種類がある。

緩和ケア病棟で働きたいと思ったときに、この2種類の違いというのが自分のイメージする働き方ができるかどうかの分かれ道になる。

それぞれを簡単に説明すると、「緩和ケア病棟入院料1」の方が取れる診療報酬は高い。

ただ、「緩和ケア病棟入院料2」と比べて少しだけ条件が厳しくなる。

特に「入院を希望する患者の速やかな受入れにつき十分な体制を有すること」という条件がやっかい。

この条件をクリアするにはそれなりに病床数をコントロールする必要がある。

しかし一般病棟と違い、緩和ケア病棟は病気を治療して退院することを目的とした病棟ではない。

終の棲家、つまり看取りの場として緩和ケア病棟を選んでくる患者は多い。

そんな状況で病床数をコントロールするのはなかなか至難の業だと思う。

なのでその至難の業を成すための工夫がなされている。

その工夫というのが短期入院(30日以内)の患者のみを入院させるという工夫である。

緩和ケア病棟入院料は1・2ともに30日以内の短期入院であれば取れる加算が大きい。
(同じ30日以内でも2より1の方が加算は大きい)

病院としては取れる加算が大きいというメリットがあり、患者としては入院を希望した際に待たされることなく受け入れてもらえるというメリットがある。

緩和ケア病棟に入りたいのに入れないという患者の不都合はかなり抑えられるし、より多くの患者に緩和ケアを届けることができるのは非常にいいことだと思う。

特に短期間で苦痛症状をコントロールして在宅に戻っていく患者にとっては心強いだろう。

ただもちろんデメリットもある。

それは受け入れが“短期入院の患者”に限られてしまうという点。

30日以内の短期入院。

なので緩和ケア病棟を最期の場所、終の棲家として選択することは難しい。

その場合は30日以内に亡くなることを前提として入院してもらうことになる。

ここだけ聞くとちょっと気持ちが重たくなるのは自分だけだろうか。

余命数日から数週間と診断された患者が多いため、看取りによる入退院が多い。

場合によっては入院当日に亡くなるなんてこともある。

もちろん前述したように30日以内に苦痛をコントロールして在宅にという患者もいるが、いずれにしても期日を意識しながらの介入になる。

必然的にややあわただしい雰囲気になる。

あわただしい雰囲気というのはあくまでも医療者側の話で患者にとってはその限りではないとは思う。

ただ最期の時間をゆっくり過ごしてもらうイメージをもち、ともに穏やかに過ごそうと思って緩和ケア病棟に就職したら想像と違って毎日バタバタ…イメージと違う…なんて知り合いも少なくない。

限られた資源を多くの人々に届けるためには工夫がいる。

短期入院の患者中心に受け入れることで、より多くの患者に緩和ケアを届けることができ、施設としてはしっかり診療報酬を得られるので経営の維持ができる。

どちらも非常に大切なこと。

ただその方針を知らないとイメージとのギャップでつらくなる可能性はある。

それに対して「緩和ケア病棟入院料2」は1と違い、「入院を希望する患者の速やかな受入れにつき十分な体制を有すること」という条件は満たさなくてよい。

つまり病床数をコントロールする必要性が「緩和ケア病棟入院料1」よりも低いため、受け入れを“短期入院の患者”に限定する必要がない。

するとどうなるか。

たとえば余命としては数か月、数年だと診断されていても在宅で過ごすには不安や苦痛がある人も緩和ケア病棟に入院できる。

短期入院の患者ばかりを受け入れているわけではないため、「緩和ケア病棟入院料1」と比べて看取りの頻度や入退院によるあわただしさは少ないように思う。

自分は「緩和ケア病棟入院料2」の施設に1か月間泊まり込みで実習をさせてもらったが、看取りの件数は2人だった。(在宅退院は0)

平均在院日数を30日以内に抑える必要がある「緩和ケア病棟入院料1」の施設に比べてこれはかなり少ないと思う。

“短期入院患者に限定しない”とややまわりくどい言い方をしたが、言い換えると入院期間を気にする必要がほとんどないので長期入院どころか人生の最期まで緩和ケア病棟で暮らすという人ばかりだった。

そのため、緩和ケア病棟は患者にとっては家であり、まさに生活の場として存在する緩和ケア病棟である。

もちろん苦痛のコントロールは同様に行うが、コントロールできたから一度在宅に戻ろうかという決まりはなく(もちろん戻ってもいい)苦痛が緩和されても入院を継続できる。

あと個人の経験として長期入院患者が多いと季節の節目や日々のメリハリのためにイベントが多い印象がある。

これは施設によるかもしれないが。

つまり「緩和ケア病棟入院料2」の施設は患者の入れ替わりがそう頻繁には起きないので患者とともに穏やかな時間を過ごし、患者の人生の最期の瞬間まで伴走できるということ。

自分のイメージする緩和ケア病棟は完全にこちら側で、就職を希望する多くの学生もそうじゃなかろうか。

ただ、全国的には圧倒的に「緩和ケア病棟入院料1」の施設の方が多い。

それはなぜか。

それは「緩和ケア病棟入院料2」だと患者が亡くならない限り新しい患者の受け入れができないから。

つまり地域に緩和ケアを必要としている患者がいてもすぐには受け入れてもらえず、順番待ちをしなくてはならない。

順番待ちといっても待つ時間は“人が一人亡くなるまで”だ。

そんなにすぐ自分の番はまわってこない。

さらにいうと待っている側の人生がどこまで続くのかもわからない。

待っている側も緩和ケアを必要としている状況というのはそういうことだ。

なのでタイミングよく入院できた患者にとっては最高の環境かもしれないがなかなか入院できない患者にとっては複雑な感情もあるだろう。

医療の公平性という視点で見てもこれは最大のデメリットである。

緩和ケアを必要とするより多くの患者に届けるためには「緩和ケア病棟入院料1」でないと難しいし、診療報酬の面から見ても「緩和ケア病棟入院料1」のほうが高いため、「緩和ケア病棟入院料2」の施設は少ないのである。

「緩和ケア病棟入院料1」と「緩和ケア病棟入院料2」を比べてどちらがいいとは一概には言えない。

どちらもいいところがあり、カバーできないところがある。

つまるところ同じ“緩和ケア病棟”と明記されていても役割が違うのだ。

なのでもし緩和ケア病棟で働きたいと思ったならばその違いを意識して就職先を選ぶことをお勧めする。

でないとイメージとのギャップに押しつぶされることになりかねない。

こんなはずじゃなかったのに…となる前に一度調べてほしい。

気になる施設の届け出を確認するか、「平均在院日数」を見て30日以内であれば「緩和ケア病棟入院料1」の可能性は高いと思う。

だらだら書いてやろうじゃねぇか。

なんて書き始めたら本当に長くなってしまった。

ここまで読んでくれた人ありがとう。

最後に補足だけどこういう現実とのギャップって緩和ケア病棟に限ったことじゃないよね。

どの診療科だって施設によって強みは違う。

緩和ケア病棟はわかりやすく制度で方針が違うから取り上げてみたけどいずれにせよ就職先として選ぶなら自分のやりたいことができるのかをきちんと調べてから選ぶこと。

なんていうまでもないけどあらためて。

今回の文章を書くにあたり、DMをくれた方ありがとうございました。

おわり。

おまけ

緩和ケアに興味を持っていただけて嬉しい限りです。

実際のところをお伝えするには制度の話抜きにはできないのでちょっと小難しい話からさせてもらうことになるのでややこしければすいません。

緩和ケア病棟に関してですが、まず大きく分けて2種類の緩和ケア病棟があります。というのも診療報酬を算定するにあたり、緩和ケア病棟入院料1と2の2種類の届け出ができるからです。2つの違いをすごく簡単に言うと「短期入院で診療報酬を多くとる」か「診療報酬を少し妥協して長期入院も受け入れる」かという感じです。

入院料1で届け出をしている場合は「短期入院で診療報酬を多くとる」のパターンが多いと思います。短期入院というのは「入院期間が30日以内」を指します。入院期間が30日を越えてしまうともらえる診療報酬が少なくなるので短期入院患者を中心に受け入れる方針ということです。その理由は「入院を希望する患者の速やかな受入れにつき十分な体制を有すること」という条件を満たす必要があるからです。そのためには必然的にベッドの空きをある程度確保しておかねばならず、長期入院患者ばかりだと条件を満たせないため入院料を取れなくなってしまいます。この理由から入院料1は上述のパターンになることが多いです。では入院前に30日以内の入院になるかどうやって判断するかということになりますが、一番シンプルなのは余命が数日から数週間と予測される患者です。入院してから30日以内に亡くなればそれは短期入院となります。なので基本的に余命の短い人を中心に受け入れることが多いようです。また、ある程度元気な人も入院はできますが連続した入院期間が30日以上にならないように一時退院などを取り入れながら調整するようです。

なので看取りの件数や患者の入退院が多く、わりとバタバタとした印象を受けるかと思います。ぼくは入院料1の施設で働いたことはないのですが、知り合いの話では入院して数日や下手すると数時間で亡くなるような方も多く、ゆっくり患者と関われると思っていた緩和ケア病棟のイメージを崩されたというような話を聞くこともあります。

対して、入院料2で届け出をしている施設は「診療報酬を少し妥協して長期入院も受け入れる」ことが多いです。この理由は「入院を希望する患者の速やかな受入れにつき十分な体制を有すること」という条件を満たさなくても入院料2は届け出ができるからです。この条件を必ずしも満たす必要がないため、長期入院患者の受け入れもしやすいということです。では長期入院患者を受け入れるとはどういうことかというと、緩和ケア病棟を最期を過ごす場所として選びやすくなります。たとえ余命が数か月、数年だとしても自宅で生活するにはつらい症状があることはあります。そういった場合は入院料2の緩和ケア病棟なら長期入院を受け入れてくれる傾向にあるので人生の最期を過ごす場所として緩和ケア病棟を選ぶことができます。この場合、30日以内に退院させなくてはいけないという病院側の都合はないので、患者のリズムに合わせたゆっくりとしたかかわりができるのが利点になると思います。入院料2の施設で働いたときには本当に家で暮らすかのような緩やかな時間が流れており、個人的には緩和ケア病棟のイメージはこちらの過ごし方が当てはまると思います。じゃあどこも入院料2にすればいいじゃんという話になるかもしれませんが、もちろんデメリットもあります。それは入院を希望する患者がいても長期入院患者が多い場合は誰かが亡くならないと空きが出ないという点です。余命幾分もない状況で空きが出るまで何か月も待つというような施設ばかりだと患者としては困るので入院料1のやり方は多くの人に緩和ケアを届けるという意味では大きな意義があります。なので一概にどちらがいいとは言えません。

かなり長く複雑な話になってしまい申し訳ありません。

なので緩和ケア病棟の実際となるとその病棟が入院料1か入院料2かで雰囲気や関わり方は全然違うということになります。もし緩和ケア病棟への就職などを考えているのでしたら届け出をしている入院料の種類を確認するか、もし明示されていなければ、平均在院日数を見て30日以内かそうでないかである程度判断ができると思います。

○○さんの知りたいこととずれてしまっていたらすいません。

追加で気になることや知りたかったことと違えばまたいつでも連絡ください。

あひるのマーチのDM返信文

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