【あなたならどうする?】患者の誕生日

入院患者の誕生日。

入院中にその日が来るとみなさんの施設ではどうしてる?

きっとその対応は千差万別。

いろいろだと思う。

ちょっと気になったのでTwitterで聞いてみた。

n数はそんなに多くないけどひとつの結果として見てもらいたい。

その結果がこちら。

個人的にはちょっと意外な結果。

というのも自分の施設は「プライマリーが考える」にあたる。

だから勝手にほかの施設もプライマリー次第でやったりやらなかったりが多いのかなと思ってた。

自分のところしか知らないとそれが常識になってしまいがちっていう悪いところ。

そしてあらためて結果をみると「決まりがある」と「やらない」で約7割。

やるにしろやらないにしろきちんと統一できているということはすごくいいことだと思う。

さきほど自分の施設は「プライマリーが考える」だと言ったけどこれってあんまりよくないことだと思う。

だってプライマリーのやる気や思い入れなんかで患者によって差が出るってことだから。

昔はそういうのあまり考えてなかった。

新人の頃、NICUでは誕生日どころか〇か月記念で手形足型や写真ボードなどなどいろいろやってた。

これは先輩もこういうのやる人が多くてすごくいいなって思ったから真似してやっていたこと。

もちろんやってない人もいたし、強制されたわけではなかったけどやってないと“やる気のない人”みたいな言い方をされることもあった。

自分はやる側だったから何も言われなかったしやらないひとに「やればいいのに」と思うこともなかった。

それこそ自分は好きでやってたわけだしね。

その考えはNICUから出ても変わらなかった。

小児がん患者を受け持っても誕生日などの節目には何かしたいと思い、飛び出すメッセージカードとか手作りでけっこう手の込んだものあげてた。

でもやっぱりそういうのって人による。

だから状況によってはこっそりお祝いすることもあった。

総室で他の子の誕生日が近い場合など、もし別の子が期待してしまってお祝いされなかったらと思うとつらかったから。

そんなやり方でも特に大きなもめごとや患者を傷つけるような出来事は起こらなかった。

幸いにもそういうのが好きな人が多かったから。

まぁ小児科ってのは基本的に子どもが好きな人が集まってる。

だから自然とみんなイベント事など楽しめるようにしていた。

でもやっぱり心の中に少ししこりは残る。

何もやらない派の人の代わりに何かしてあげられないかと考えたこともあるけれどそれこそこの先すべての患者に同じことができるかわからない。

わからないというかきっと無理。

さすがにそこまで自分をささげられない。

ずるい考えだけど自分の受持ち患者だから頑張れることだってある。

この考え方をあらためるきっかけになったのは認定教育課程で実習をした緩和ケア病棟だった。

その緩和ケア病棟では患者の誕生日は「みんなで小さな色紙にメッセージを書く」に統一されている。

その他にプライマリーの采配で特別なことをしてはいけない。

自分の施設では上述のような対応をしていたので“祝い方を統一する”というのはどこか義務的な感じがして少しモヤモヤした。

実習中の身ではあったがそのモヤモヤを病棟のスタッフ及び認定教育課程の指導者に尋ねた。

「誕生日祝いを統一するというのはどこか義務的な感じがして少し違和感があります。みんな平等にという考えはわかりますがそれぞれがそれぞれのやり方でお祝いするのは良くないことなのでしょうか?」

それに対する返答は

『入院患者それぞれと平等に向き合うというのは医療者としての大前提です。特にこのようなイベントごとで”やったやらない”という差がつくことはその人の尊厳を脅かしている可能性もあります。そして緩和ケア病棟に入院している患者さんのイベントというのはその人にとって人生最期のイベントになる可能性が高い。そのためみんなを平等にお祝いできるようにと統一した形式をとっています。』

おおむねこんな感じの返答だった。

なんとなくきれいごとのように感じてちょっと納得いかない部分もあった。

そんな思いを顔色から察したのか指導者はさらに続ける。

『患者さんに対していろいろしてあげたい気持ちはわかります。でも患者さんは何のために入院しているのでしょうか?うちでは最期を穏やかに過ごすため、あなたのところでは治療して家に帰るためですよね。一番大事なことを忘れてはいけません。我々看護師が精魂込めて取り組むべきは“診療の補助”と“生活援助”なのです。誕生日のお祝いも大事ですがそこで万が一誰かの尊厳が脅かされることがあれば看護師としてそのことを大きく悔やむでしょう。あなたが頑張るべきはそこではない。日々の看護で目の前の患者さんと誠心誠意向き合うことが何よりも大切なのではないですか?』

結局きれいごとはきれいごとなのかもしれない。

でもこの言葉とそれを発する指導者の表情がとても強く心に響いた。

教育課程終了後。

自施設にかえって誕生日を統一する案を上司に相談した。

だが返事はあまり芳しくなくやはり誕生日は義務的に取り組むイベントではないと否定的な意見だった。

小児科ということもありある程度自発的に動く人が多い状況でそこを押さえつけてまで統一するメリットはそこまで大きくないのかもしれない。

でも一度変わってしまった考えは簡単には戻らない。

入院している子どもたちみんなが喜んでくれて満足できてただのひとりも取りこぼすことのないように。

みんなが納得できる方法を探しているところ。

自分の理想は看護師が各自でいろいろするのではなく保育士と協働してなにかできないかと考えている。

保育士はそのような制作のプロで看護師よりも技術、アイデアともに優れている。

さらにいうと看護師は時間外でしなければならないが保育士なら業務として制作にあたることもできる。

保育士には日頃からお世話になってるのであまりいろいろお願いするのも心苦しいけどうまく協働できないかなと画策中。

最後になるけど誕生日などイベントは絶対に統一すべきだって話ではなく患者の満足度や看護師の負担などいろんな側面を考慮して自分の施設にあった方法をみんなで考えられたらいいよねと思う。

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