【表裏一体】救急と緩和の親和性

救急医療と緩和ケア。

この二つを見比べた時にみなさんはどう思うだろうか?

もしかしたら

「命を救うための救急医療」

「命を看取るための緩和ケア」

なんてイメージを持つ人もいるかもしれない。

そのイメージが間違っているとは言わない。

そういった側面があることは事実としてあると思うから。

でもそれが完全に相反するものだというイメージを持つ人がいるならばそれは違うとはっきり否定しておきたい。

「命を救うための救急医療」

というのは全くもってその通りだと思う。

救急医療の専門家ではないので認識が甘ければ申し訳ないが、救急医療の最大の目的は救命にあるといっても過言ではないと思っている。

しかし

「命を看取るための緩和ケア」

これはあくまで一側面に過ぎない。

というのも緩和ケアの目的は看取りをすることではない。

“全人的苦痛の緩和”こそが最大の目的となる。

看取りの場面では治療による成果が見込めないことが多い。

そのため、症状緩和に焦点が当てられる。

しかし、治療が見込める場面においては”治療こそが最も有効な苦痛緩和”となる。

例えば「せん妄」に苦しむ患者がいたとする。

せん妄の原因が高齢や脳疾患など患者の性質によるものであればせん妄の症状緩和を図る他ない。

しかしせん妄の原因が感染症や電解質異常なら当然治療すればせん妄は改善する。

緩和ケアと積極的治療を別物と考える人もいるかもしれないが、治療で改善する症状なのであれば積極的治療こそ苦痛を緩和するための最も適した手段となる。

その積極的治療の最たるものが救急医療だと思っている。

緩和ケアは救命をあきらめた末にたどり着くケアではない。

治療可能な症状があるのであればまずは治療を行うというのは緩和ケアの視点で見ても大原則となる。

もちろん治療に伴う副作用など別の苦痛が出現することも多々あるためそれらにも対処する必要がある。

緩和ケア病棟などで看取る際に積極的治療や救命処置が行われないのはそれが苦痛緩和どころか患者の苦痛を増強するだけの行為となるからである。

治療による根治ができないと診断されているからこそ穏やかな最期を迎えるために症状緩和に精通した緩和ケア病棟などを終の棲家に選ぶのである。

しかし、冒頭で記載したように「命を看取るための緩和ケア」はあくまで一側面に過ぎない。

治療そのものが緩和ケアであるという視点を持つと、ICUなどで行われる積極的治療の中にも緩和ケアはたくさん見つけれるはず。

自分がNCPR、PALS、BLS、PEARSなどの救命処置に関する資格を持ち、更新しながら継続学習を続けている理由はそこにある。

緩和ケアの専門家を名乗ると“救急医療のことはわからない”と思われがち。

個人的にはむしろ看取りに携わる人ほど命を救う医療に精通しておいてほしいと思うのだけれど。

治療が苦痛緩和の手段になり得る以上はある程度の積極的治療の知識は必要不可欠となる。

なので先に挙げたような資格をベースに最低限の知識を持つことでICUなど積極的治療の場でも臆せず緩和的介入ができるように備えている。

まだまだ救急医療の場における緩和ケアへの理解は十分とは言えない。

でも理解を呼びかけるだけでは誰も耳を傾けてはくれない。

ならばまずは緩和ケアの専門家である自分が救急医療を理解することからはじめる。

相手の土壌に上がることでそこから見えてくるものを探す。

いつか救急医療の場でも緩和ケアが当たり前のように意識される日が来るといいなと夢見ながら。

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