子どもの悲嘆 ニーズへの対処

シャーマンによる10の方法

  1. よいモデルの提供
  2. 正確で明確な情報
  3. 理解されるニーズ
  4. 除外されないで仲間に入れてもらうニーズ
  5. コントロールできるという感覚のニーズ
  6. 一貫性のニーズ
  7. 安全性と安心感のニーズ
  8. 表現する許可(あるいはしなくていい許可)
  9. さまざまな方法での表現ニーズ
  10. 記憶、結合、意味の創出ニーズ

よいモデルの提供

子どもは大人の良きモデルが必要。

・ストイックで抑制的な親
 何としてでも強い子であることを求める。
 感情を内側に押し込めて前に進むことを求める。

・立ち上がることもできないほど弱った親
 子どもから世話をしてもらうことを求める。

・部屋で一人で泣く親
 子どもの前では感情を隠し、悲しみを共有することを拒否する。

適切なサポートを持っている親
 子どもに世話をしてもらう必要はなく、感情表現をしても問題なく、助けを求めても弱い子であるとは思わない。

正直で明確な情報

大人は子どもに親の死について正確な情報を伝えることを恐れる。

・大人自身の恐れ、悲しみ、不信などによって伝えることができない。

・子どもが苦しむのを防ぐため。
 事実は伝えずにまるで何事もなかったかのように振舞うこともある。

・ほとんどの大人は子どもに死についてどう伝えたらいいか知らない。

・苦しんでいる人を見ると自分も苦しくなり、どのように慰めるべきかわからない。

正確な情報が伝えられずに嘘を聞いた子どもの心には怒りや恨みの感情が残る。
嘘を言われて喜ぶ子どもはいない。

理解されるニーズ

親の死に関して子どもが知っていることや思っていることと伝えられた知識や思っていることに大きな隔たりがあると、子どもは理解されていないと思い、親に対する不信が強く、とても高い不安を経験する。

親に理解されていると思っている子どもは、自分に自信があり、不安も低くなる。

除外されないで仲間に入れてもらうニーズ

親の死に際して、葬式のやり方について子どもと相談するかどうか、また参加させるか否かを悩む親もいる。子どもに十分な説明をしたうえで参加するかどうかを自分で決めてもらうことが推奨されている。

判断が難しい場合も多々あるが、基本的にはきちんと説明し、心配なことを話すことが大切。
以下のことを話し合う機会を得た子どもは貴重な経験になる。

  • 埋葬の形式
  • 棺の選択
  • 遺族の服装
  • 棺に何を入れるか
  • 葬儀のやり方
  • 葬儀に参加するかどうか

コントロールできるという感覚のニーズ

死を前にすると誰もが無力になる。
この経験をした子どもは自分の存在を無力に感じることがある。

遺された親は、喪失体験による無力感を補うために、子どもの行動を極度に抑制し、いろんなことを禁止することによって安全性を得ようとする傾向がある。

そのような子どもは、完全な他者を求めてその人に依存することで人生をコントロールしようとする

依存ではなく、生産的な努力によって自分の人生を拓く力の育成が必要

一貫性のニーズ

配偶者の死亡によって遺された親は、子ども教育が極端にゆるやかになったり、逆に厳しくなったりする。今までと同じ教育方針が維持できない場合、子どもは今までのように衝動を抑制できなくなり、問題行動を生じる傾向がある。

教育方針の一貫性を保ち、子どもを不要に混乱させないようにする。

安全性と安心感のニーズ

親の死に直面した子どもはこれからどうなるのかと疑問を持つ。

遺された親も死ぬのではないかと思うこともある。

犯罪に巻き込まれたような死を体験すると自分もそのような目に合うのではないかと不安になる。

夜尿症などの症状が出ることもある。

親が自殺した場合、子どもはのけ者にされたように感じることもある。

病死なら自分も同様の病気になる恐怖感を抱く。

これらの不安や恐怖にはそれなりの理由があるが、生涯にわたってそのような不安や恐怖に囚われ続ける必要はない。恐怖から抜け出して安心できる生活を確保してもよい。

表現する許可(あるいは表現しなくてよい許可)

気持ちや思っていることを表現してもいい、あるいは表現しなくても許される安全な場所が大切。

悲嘆の正しい表現やプロセスは存在しない

親の死亡を体験する前から寡黙な子どもであればそのままでも何の問題もない。
しかし、気持ちを表現したいのであればそれもまたよい。

気持ちを表現することを強制された子どもは、逆に抑制する傾向がある。

さまざまな方法での表現ニーズ

感情表現のための様々な手段を提供する。

粘土やイラストなどの制作の他、歌や踊りなどの身体的表現も含まれる。

問題行動の表出であるアクティング・アウトは、援助が必要であるという子どもによる行動表現。
アクティング・アウト:意識したくない「無意識の衝動・欲求・感情・葛藤」が意識化されそうになったとき、それを回避しようとする防衛反応のことを言う。「行動化」とも呼ばれてる。
自覚ができていない衝動・欲求・感情・葛藤が、言葉としてではなく行動として表れる。
自傷行為、自殺企図、暴力行為などが含まれる。

普段は我慢するように言われている感情を安全に吐き出すことは可能である。

記憶、結合、意味の創出ニーズ

死者と何らかの関係性を持ち続けることは、悲嘆には特に必要な作業

前に進み続けることが重要視される現代文化では、過去の死者との関係を軽視しがち。

特に子どもは死亡した親との気持ちが強いという特色がある。

親の死亡した日、誕生日、父の日、母の日などを利用して親を思い出す記念の日とすることもできる。
写真を撮ったり、死亡した親に手紙を書いたり、夢の中で出会ったり、親が見守ってくれているという感覚を持つことができる。

これと同時に大切なことは、その子が人生をどのように考えているのかを確かめること。
「人生は不平等なのか」
「親の死に何か意味があるのか」
等の疑問は人生の核となる個人の信条を確かめることにもなる。

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