前回の内容で“初期配属がまさかのNICU”みたいなことを書いた。
自分は緩和ケア認定看護師になるんだ。
小児がんの看護をするんだ。
そう思っていた自分は配属希望用紙の第1希望欄に迷うことなく「小児がん病棟」と記載していた。
何の根拠もなかったのだがこの時の自分はなぜか絶対に第1希望の部署に配属されると信じ込んでいた。
不思議なもんで本当にまったくもって自分がほかの部署に行くなんて微塵も思ってもなかった。
そんな中で配属されたのがNICU。
でも実はまさかとか言いながら入職時の第2希望はNICU。
だから全然可能性のある部署だった。
小児がんとはかけ離れているNICUをなぜ第2希望にしていたのか。
今回は第2希望にNICUと書いた理由をつらつらと書き記す。
そもそも自分の大学ではNICUでの実習はなかった。
母性実習の中で新生児実習はあった(というか自分は男性のため新生児がメインだった)のだがNICUに関しては見学すらなかった。
なので自分の中でNICUとは未知の場所であった。
自分の病院では採用者に対するインターンが行われており、指定期間内(確か2週間ぐらい)なら何回でも好きな部署を1日見学できるという制度があった。
その制度は使うも使わないも完全に自由でもちろん評価などには影響しない。
自分はここぞとばかりに利用した。
ただその利用方法が少し変わっていたらしい。
上述したが自分は小児がん病棟に配属されるとなぜか確信していた。
なので小児がん病棟は入職してからいくらでも見れるとインターンに行かなかった。
インターンに選んだ場所は「NICU」と「小児循環器病棟」。
どちらも大学では実習経験のなかった部署。
“疾患を抱えたまま生活する子ども”の中には小児がんのようなある日突然診断される場合と先天性疾患により出生直後からNICUや小児循環器病棟で過ごす場合が多い。
そのためこの2つの部署をインターン先に選んだ。
そしてこのNICUでの1日がとても意義のある1日だった。
NICUへのインターン。
12月の中頃。
採用が決まっているとはいえまだ国試も受けていない看護学生。
おそらく一般的な実習のような内容で新生児の特徴を聞いたり抱っこやおむつ交換など簡単なケアを体験させてもらう。
そもそもNICUという場所が初めてだったので何もかも新鮮でとても興味深い体験だった。
そんな1日が終わろうとする頃、一人のお母さんと話す機会があった。
(この先少し改変あり)
子どもの面会に来ていたお母さん。
4月から入職する予定の学生ですと紹介され、子どもを挟む形で母の横に座らせてもらった。
母はとても気さくな人で家族から見たNICUがどんなところか冗談を交えながらたくさんお話ししてくれた。
ある程度話し終えて少しトークペースが落ち着いたころ。
母が少し控えめな、でもはっきりと伝わる声で言った。
「もしこの子が4月まで元気でいたらまた会いに来てね」
(元気でいたら?)
学生の自分はすぐには理解できなかったが続く母の言葉が答えだった。
「この子は遺伝子疾患があるの。本当は生後半年も生きられないって言われてた。だから生まれてすぐは面会にも来れなかったんだ。すぐにお別れが来るのがわかってるのにこの子を愛するのが怖かった。愛して失って傷つくのが怖かった。でもここの看護師さんたちはそんな私に勇気をくれた。たとえ先は長くなくても今を生きているこの子と向き合う覚悟をくれた。弱い私を支えてくれた。そして何より私がここに来れるようになるまでこの子を守ってくれていた。今ではこの子と一緒に少しでも家で過ごせるといいなって退院に向けてがんばってるところ。ここの看護師さんたちは本当に素敵な人たちばかりだからあなたもきっと素敵な看護師さんになれるよ。」
母が穏やかな表情で語り終えた後、何と言えばいいのかわからず涙がこぼれ落ちそうになるのを必死で我慢しながら「ありがとうございます」と絞り出した。
このお母さんの話が自分をNICUの世界へグッと引き寄せた。
NICUの看護師ってすごいんだな。
もちろん看護師だけの力ではないだろう。
でも看護師の日々の関わりがきちんと母に伝わり、子どもにとっても最善の環境で最期の時間を過ごせていたのではないか。
もし母がそのまま面会に来なかったら。
きっとこの子はそのまま病院で看取りになる。
家族の姿はなく、医療者だけに見守られながら。
それが不幸かどうかはまた別の話だが個人的には家族と過ごせるならそれに越したことはないと思う。
子どもの最善の利益のために親と子の懸け橋になった看護師は本当にすごいと思った。
まだまだ子どもの看取りに関して知識も経験も乏しかった自分。
素直に感動し、生まれてくる命を未来へつなぐNICU、生まれてすぐに亡くなってしまう命を看取るNICU、そのどちらの側面にも魅了された。
その結果として第2希望にNICUと書いたというわけ。
それでも第1希望じゃなかったんだ?という問いに対してはやはりやりたいことは明確にあったのでそこはブレなかったということかな。
冒頭に戻るがそんな理由で書いた第2希望のNICUにまさかの配属となりNICU看護師として1年目がはじまったのであった。
こんなペースで書いたら超大作になってしまうので次回からはもう少しサクッと書いていこうかな。
書き出すといっぱい書きたいこと出てきて困る。
次回もいつになるかわからんけどお楽しみに。
つづく。
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