Vol.18【どこが変わった?】痛みの定義 2020 での変更点

緩和ケアのちょっとタメになる話 Vol.18「痛みの定義 2020 での変更点」

ということで今年度も細々と続けていく予定の「ちょっとタメになる話」。

つい最近読んだ小児看護雑誌で痛みについて取り上げられていたのでそこに便乗する形でこのテーマにしてみた。

実は2020年に痛みの定義が改定されてたって知ってた人はどれぐらいいるだろう。

世間ではコロナが騒がしすぎてあまりこういう定義の変更とかに目が向いてなかったかもなと思う。

ということで「そんなことがあったのか」と思った人はぜひ続きを読んでほしい。

6be5fa54f4798b40461d419f19a0e9ae

定義と注釈のみを抜粋したが、より詳しく知りたい人は「改定版「痛みの定義:IASP」の意義とその日本語訳について(日本疼痛学会理事会)」で検索してもらえれば原文が出てくるので参照してもらえれば。

ポスターの後半にも書いたけど見比べてもどこが変わったかよくわからない人はいると思う。

正直なところ自分も定義だけを読むとスムーズに解釈するのは難しい。

だからこその6つの注釈があるのかなと思う。

この6つの注釈に関してはかなりわかりやすく説明してくれている。

それぞれを簡単に取り上げておく。

  • 痛みは常に個人的な経験であり、生物学的、心理的、社会的要因によって様々な程度で影響を受けます。
    これに関しては1979年の定義と変わらない。痛みは主観なので「痛みがある」と言えば痛みはあるのだということ。その痛みは様々な要因によって影響されるということも前回と変わらない。痛みをみる医療者にとっての大前提の部分となる。
     
  • 痛みと侵害受容は異なる現象です。 感覚ニューロンの活動だけから痛みの存在を推測することはできません。
    これは個人的にちょっと面白いなと思った。痛みを侵害受容と区別するということ。侵害受容とは傷害などにより組織がダメージを負うこと。通常はそれに伴い痛みが発生する。つまり“侵害受容により痛みは発生するが、痛みが発生したからといて侵害受容があったわけではない”ということを明確にしている。痛みを様々な側面から捉える必要があるということを示しているのだと思う。
     
  • 個人は人生での経験を通じて、痛みの概念を学びます。
    痛みの受け取り方は人それぞれだということ。これも今までの定義と大きく変わることではない。以前の定義でも「幼少期の経験から痛みという言葉の使い方を学ぶ」と注釈にある。つまり痛みは人生を通して培われるものであり、小児看護に携わる医療者が疼痛緩和に力をいれることはその場の痛みだけでなく、その子がその先の人生で直面する痛みに対しても間接的なケアになるということ。これすごく大事なことなので覚えておいてほしい。
     
  • 痛みを経験しているという人の訴えは重んじられるべきです。
    これも今までと変わらない。痛みの訴えを信じて受け止める。たとえ医学的に疼痛が生じる状況になくても「痛いと言えば痛みはある」という大前提を忘れてはいけないという話。
     
  • 痛みは,通常,適応的な役割を果たしますが,その一方で,身体機能や社会的および心理的な健康に悪影響を及ぼすこともあります。
    これも特に言うことはないかな。適応的な役割というのは「痛みは身体の危険を知らせてくれている」ということだと思う。そして痛みが悪影響を及ぼすというのも言うまでもない。
     
  • 言葉による表出は、痛みを表すいくつかの行動の1つにすぎません。コミュニケーションが不可能であることは,ヒトあるいはヒト以外の動物が痛みを経験している可能性を否定するものではありません。
    これはとても大切なこと。ちょっとタメになる話で挙げた1979年の定義には“言葉による表現”とは書いていないが、調べてみると翻訳者による違いなのか「言葉によって表出される」と定義されているものもあった。2020年版は「言葉による表出は手段の一つに過ぎない」明記している。つまり非言語的な訴えをより重要視する必要性を述べてくれている。これに関してはおそらく小児看護師は得意分野だろう。普段から言葉によるコミュニケーションの取れない相手とも意思疎通を図ろうとしていることが多いだろうから。

とまぁ簡単にではあるが6つの注釈について触れてみた。

個人的にはこの6つが痛みの本質であり、定義は“定義しないとだめだから”定義されているのではないかと思う。

定義をこんな長文で書くのはしっくりこないもんね。

だからあえて定義を抽象的な表現にすることで痛みを取り巻く様々な要因を包括させ、注釈で細かな補足をするという表現になったのかなと。

もちろん単純に自分の理解が及ばないだけかもしれないけどね。

あらためてになるけど痛みの定義が変わったからと言ってやることは大きく変わらない。

ただ「痛み」というものは様々な要因に影響されるということをあらためて認識し、「痛み」との向き合い方は時代の流れに伴い変わることもあるということを理解する。

そういう姿勢が大切なのかなと思いつつ、これからも痛みと向き合う日々を過ごしていこうかと。

おわり。

コメント

タイトルとURLをコピーしました