Vol.12【何をもって評価する?】モルヒネによる呼吸困難の緩和

緩和ケアのちょっとタメになる話Vol.12

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タイトルにある通り、モルヒネは鎮痛作用を目的として使う以外に“呼吸困難の緩和目的”に使用することがある。

モルヒネの基本的な性能は以前まとめたのでそちらを見てもらえればと思う。

今回は「モルヒネによる呼吸困難の緩和」ということで少し呼吸困難の緩和について掘り下げようと思う。

まずおさらいとして呼吸困難と呼吸不全の違いはしっかり押さえておいてほしい。

この違いが曖昧になってしまうと評価基準が大きくずれてしまう。

モルヒネの効果はあくまで“呼吸困難の緩和”なのでSpO2を上昇させる効果はない。

そもそもSpO2の低い患者、つまり呼吸不全の状態にある患者にモルヒネを使うというのはかなりリスクがあるので基本的に使用することはないと思う。

(挿管管理中や気切患者など換気方法が確立されているなら話は別)

呼吸不全に治療介入するならモルヒネは不適切だし、治療介入する段階にない(終末期や死亡直前期)状況での呼吸不全なら“晩期死亡前兆候”と考えられるので呼吸困難うんぬんよりどのような看取り(モルヒネを使う使わないも含めてだが)を迎えるかといった検討にシフトする必要がある。

なのでモルヒネを使うのは患者の主観的症状である呼吸に関する不快感を改善したい時となる。

くり返しになるが、呼吸困難は患者の主観的症状となる。

主観的症状である以上、効果の有無は患者自身に確認するほかない。

この確認については口頭で確認するだけでも良いが、可能であればNRSなどのスケールを使用しながらモルヒネ投与前後の呼吸困難を比較して評価するとより実感として効果を比較しやすいと思う。

また、モルヒネに過度な期待をしすぎないよう、導入前にきちんと説明しておく必要がある。

患者によっては「モルヒネを使えば呼吸が楽になる」と説明されたら「呼吸困難がなくなる」と捉えていることもある。

もしかしたら医療者でもそう思っている人はいるかもしれない。

呼吸困難の緩和というのはあくまで“緩和”。

“少し楽になるかも”というぐらいの認識が適切かと思う。

ほんの少し楽になることで

「立ってトイレに行ける」

「会話できる時間が増える」

「よく眠れるようになる」

などなどプラスの影響が出ることは十分にある。

看護師はそのプラスの影響を見逃すことなく患者にフィードバックすることも大切な役割である。

モルヒネが呼吸困難を緩和するというのはモルヒネが呼吸中枢に働きかけるためである。

正確には呼吸回数を抑えることで呼吸困難を緩和させるということになる。

そのため、患者の自覚症状やスケールのほかに呼吸回数をきちんと測定しておくことがモルヒネの効果を評価するうえで非常に役に立つ。

バイタル測定の中でなぜかなおざりにされがち(個人の偏見)な呼吸回数。

呼吸というのは身体の様々な変化を著明にあらわすのでモルヒネの評価に限らず普段から意識してみる習慣をつけておくといざというときにいろいろと役に立つ。

ということで今回はモルヒネと呼吸困難の話でした。

これからの看護に活かしていただければ嬉しいです。

おわり。

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