「大人の経験してから小児科の方がいいですか?」
タイトルにもしたこの言葉。
看護学生からわりとよく聞かれる言葉。
質問の意図としては採血などの一般的な手技獲得ができないのではないかという不安や業務内容が偏ることにより他の科への応用が利きにくいのではないかという心配なんかが理由のよう。
先に結論から述べると「やりたいことをやればいい」ということになる。
小児科に就職したことにより一般的手技が経験しずらいのはあるかもしれない。
一般的手技なんていう言葉でまとめてみたけれどはっきり言うと“採血”に対する不安じゃないかな。
小児科一筋でやってきた自分は採血の経験がない。
もちろん小児科でも看護師が採血をする施設はあるので一概には言えないが、小児科では看護師が採血しない施設は多い。
採血の手技が獲得できないことで何が困るかというと
「いつか大人の看護をするときに当然のように看護師が行うであろう採血ができない」
「いつかクリニックなどで働くときに採血ができないと採用されない」
とかとかがよく聞く理由。
個人的には採血を含めてどんな手技でもちょっと練習すればすぐできるようになる。
逆に言うとどんなケアでも毎日やっていようがちょっとやらないとやるのが不安になるもの。
なので一つの手技にこだわりすぎず、今やりたいことをやる方が仕事に対するモチベーションは上がると思う。
さらに言うと“いつか”のことを考えて“今”やりたいことを後回しにするのは正直あまりワクワクしない。
その“いつか”が本当にやってくるかもわからないわけで。
綿密な人生計画があるならそれもいいかもしれないが、せっかくつらく大変な看護学生を乗り越えて看護師になったのに“いつか”のためにまた我慢してやりたいことを後回しなんていうのは気持ち的にもしんどいと思うんだよね。
もうひとつ加えると大人の科を経験したからってオールマイティにやっていけるわけじゃない。
当たり前だよね。
「小児科」と同じように大人だって「脳外科」「整形外科」「消化器内科」…などなど挙げればきりがない。
相手が“大人”だからって各科によってやることが同じなわけはない。
自分の経験として緩和ケアCN教育課程での話。
緩和ケアを学びに来ているクラスメイトはほとんどが大人のがん患者を相手に看護実践をしていた。
でもそれぞれの経験は「呼吸器科」「消化器科」…など当然違う。
肺がんにめちゃくちゃ詳しい人も大腸がんについては人並みの知識しかない。
がん患者だからってひとまとめにされているわけはなく各専門領域に分けられている。
それほど現代の医療は細分化が進んでいるということ。
聞いてしまえば当たり前の話だけど当時の自分はこの事実をこの時に初めて認識した。
恥ずかしながら自分は小児経験しかないから大人の看護を経験しているみんなは自分より“当然”詳しく知っていると思い込んでいた。
しかし話せば話すほどに「意外とみんなわかっていない」ということに気づいた。
自分は小児科だから知らなくて当たり前。
自分は小児科だからできなくて当たり前。
なんて言い訳を全くしてこなかったかと心に問い直すいいきっかけになった。
ちょっと話が脱線した気もするので元に戻す。
「大人の経験してから小児科の方がいいですか?」
この言葉の背景にはその人個人の不安のほか、教員や身近な人からの助言が関与していることも少なくない。
場合によっては看護教員から「いきなり小児科は…」なんて言われることすらある。
いずれにしてもきっとその人のことを思っての発言だろうとは思う。
でも看護教員、知り合いの看護師、その他医療従事者…
だれもがみんな自分の経験の中でしか物事を測れない。
そら人より就職関連の情報を知っていたり、実際の現場を知っていたりはすると思う。
だから参考にするのはもちろんアリ。
でも個人的には“無難な選択”を勧めるより、その人のやりたいことを応援してあげられる、背中を押してあげられる存在になってあげてほしいなと思っている。
とまぁだらだら書いてきたけど結論ははじめに書いた通り。
「やりたいことをやればいい」
もし「なんか違うな」って思ったらその時また考え直して新しい道に進めばいい。
看護師ってのはほかの職種に比べてやり直しのきく職業なんだから。
ちなみにこの話は小児科以外の科やクリニック、訪問看護なんかについても同じことが言える。
くり返しになるけどせっかく資格を取ったならまずはやりたいこと思いっきりやってみればいい。
そのあとの人生はそれから考えてもどうにかなるもんだ。
もし小児科に就職することで悩んでることがあればいつでも連絡ください。
おわり。
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