【物申す】何でもかんでも病気や苦痛のせいにすんなバーカ

やや強めのタイトルにしてみたので誤解がないよう先に言っとくけどこれは病気や苦痛でつらい思いをしている患者に向けた言葉ではない。

ちょっと勉強して知識を持ったがゆえに勘違いしてしまっている看護師に対しての言葉である。

そういう看護師はたくさんいるわけじゃないけど稀な存在というにはたまに出会うので少し思うところを。

終末期に限った話ではないと思うが、緩和ケアの勉強をしていると必ず目にする課題がある。

それは“患者の負の感情とどのように向き合うか”というもの。

負の感情には様々なものがあるが、今回は「怒り」を軸に少し話そうと思う。

疾患を患った患者は、多かれ少なかれ身体的、心理的な苦痛を伴う。

苦痛の程度は人それぞれだろうし、治療などで和らぐ苦痛もあるだろう。

そういった苦痛の中でも、特に終末期における苦痛に「治療抵抗性の苦痛」というものがある。

「治療抵抗性の苦痛」というのは読んで字のごとく、「治療をしても反応が乏しい苦痛」のこと。

もっと簡単に言えば「どうしようもない苦痛」とも言える。

臨床では「治療抵抗性の苦痛」は鎮静の開始基準とされることもある。

治療抵抗性の苦痛は医師や看護師などの専門家でも対処できず、患者の行き場を失った思いが「怒り」となって表出されることがある。

もちろんこれは“治療抵抗性の苦痛がある人”に限った話ではないのだが、よりイメージしやすいかと思い取り上げた。

あらためて。

“患者は耐え難い苦痛を怒りに置き換えて表出することがある”ということ。

こういった際に表出される「怒り」などの負の感情は、患者が苦痛を感じている一つのサインであり、医療者としては何らかの対応を検討する必要がある。

特に「怒り」は怒りを向けられた“個人の問題”とせず、チームでの対応を検討する必要がある。

“個人の問題としない”理由については、先に述べたとおり、「怒り」は「耐え難い苦痛の置き換え」として表出されているため、個人の言動が理由ではないから。

個人として何の問題もなく接していても「怒り」を向けられるような理不尽な状況は確かに存在しており、そういう状況に陥った個人が「自分が悪かった」と自責の念を持ったり傷ついたりしないようにするためということ。

というのが多くの参考書に書かれている内容となる。

もちろん何も間違っていない。

その通りだと思う。

ただ1点だけ注意してほしいことがある。

それは上記のアセスメントは「個人の言動に問題がない」という前提条件があって初めて成り立つものだということ。

これに対して少し前のTwitterでのつぶやき。

“個人の言動に問題がある”のに“病気や苦痛のせいで攻撃的になっている”とアセスメントするのは全くおかしな話。

“苦痛が怒りに置き換わる可能性”は常に頭に入れておく必要はあるが、それ以上にまずは自分の患者と関わる姿勢を振り返る必要がある。

ただこの振り返りが負担になる人もいるだろうし「あれがまずかったかな」「これで傷つけちゃったかな」と想像だけで負のループに陥るのも良くない。

なので個人的に一番手っ取り早いのは“患者と関係性を築けている人が患者に聞く”だと思ってる。

“苦痛により怒りを表出している人”は概ね誰に対してもいつもと雰囲気が変わる。

明らかに怒ってなくてもいつもより暗いとか口数が少ないとか目が合わないとか。

あれ?と思う何らかのサインがある。

対して“個人の言動に怒りを表出している人は”そのほかの人に対しての接し方は当然だが変わらない。

それなら「あの人と何かあった?」って本人に聞けばいい。

具体的な理由が出てきたらそれはもうその人に原因があったということ。

それを原因があった人に直接伝えるのは正直難しいかもしれない。

「何でもかんでも病気や苦痛のせいにすんなバーカ」って言えたらどれほど楽か。

でも本来ならきちんと伝えて問題のあった言動を謝罪するなり弁解するなりして患者との関係性を修復するべきだと思う。

伝えるのに困ったら師長なり上司に頼るのが一番現実的かなと思う。

自分の場合は子ども相手の想定なので感情の表出というのはかなりわかりやすいことが多い。

くわえて“好き嫌い”もわかりやすいし何なら本人を前にして「お前なんか嫌い」「あっち行って」とか普通に言っちゃうこともある。

まぁ子どもだから勢いで言ってることも多いのでそれが本気なのかどうかはきちんと見極めなければいけないけども。

言いたいことは「患者は耐え難い苦痛を怒りに置き換えて表出することがある」という字面だけの知識をそのまま臨床で当てはめないでほしいということ。

患者と関わる医療者の姿勢をきちんと評価してその上でアセスメントすることが大切だよって話でした。

参考書とはちょっと逆行した話に聞こえるかもしれないけど、もちろん参考書の内容を否定したいわけじゃないからね。

うわべだけの知識で満足せず臨床に活かすためにはもうひとひねり必要なんだよってことを覚えておいてもらえたら。

うまく伝えられてるかめちゃくちゃ不安だけど今日の話はこんなところで。

おわり。

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