小児がん病棟に異動してきた6年目。
NICUとはまるで違う疾患、年齢、環境…に戸惑いながらもそれなりに乗り越えて迎えた年度末。
恒例の年度末にある上司との面談。
この1年間、いかに充実した時間を過ごすことができたかを伝えた。
そして今後の目標を聞かれたので想定通りこう答えた。
『緩和ケア認定看護師になるためにまずは3年頑張ります』
それに対する上司の言葉で核心を貫かれることになる。
「今から行っちゃえば?ずっとなりたかったんでしょ?行っちゃいなよ。」
唖然としながらも認定看護師教育課程に進むには認定分野の経験が3年以上必要なことを説明する。
上司がそんなこと知らぬわけないと思いながらも。
もちろん知っていた上司は笑いながらこう答える。
「その通り。そしてキミはもう緩和ケア関連の経験を3年以上積んでいる。そうだろう?今年がん領域の経験もしたところで挑戦してみたらいいんじゃない?行っちゃいなよ。」
【行っちゃいなよ】
そんな軽い言葉で認定看護師教育課程に向かわせようとする上司。
少し遅れて自分の脳みそが理解を開始する。
緩和ケアの経験を3年以上…
もしやNICUを緩和ケア領域として計算しているのか?
その疑問は大当たり。
逆に問われた。
「新生児看護は緩和ケア領域じゃなかったの?」
ぶわっと全身の毛が逆立ったような感覚。
今まで自分がNICUでやってきたことが頭をめぐる。
それらが緩和ケアじゃなかったなどと間違っても言わせない。
“緩和ケア”という言葉にとらわれていたのは自分自身だった。
「がん=緩和ケア」と勝手に結び付けていたのは自分。
まだがん領域に異動して1年も経っていないから無理だと思い込んでいたのも自分。
それをぶっ壊してくれた上司には感謝しかない。
まだ整理の追い付かない自分に対して上司は続ける。
「やるもやらないも自由。でももし挑戦するなら応援するよ。」
と面談の時間は終了した。
その日の夜に緩和ケア認定看護師教育課程の開催を調べた。
すると願書提出まで2週間ほどしかない。
上司の言葉に高揚していた自分はその翌日、付き合いの長い師長に認定看護師教育課程を受験することを報告。
もちろん応援してくれたのだが申込期限のことを伝えるとおれ以上に焦りだしたのがおもしろかった。
面談をしてくれた上司にもその話は伝わり、病院側の対応は至急行うと約束してくれた。
そして自分も急いで願書の作成に取り掛かる。
次で最後になりそうかな。
つづく。
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