“緩和ケアのちょっとタメになる話Vol.22”はアセリオの見逃しやすい話。
とにもかくにもまずはポスターをどうぞ。
baeb08290ce8e606946cc377395dfdcdアセトアミノフェンの投与量を考えるとき、1回量は[10-15mg/kg]というのは緩和ケアに関わる人に限らず、疼痛緩和に関わる人ならだいたい知ってると思う。
でも今回はそんな基本的な投与量の落とし穴について。
くり返すが、基本的なアセトアミノフェンは剤形に関わらず、1回量は[10-15mg/kg]である。
つまり経口製剤でも座薬でも注射液でも同じで、1回量は[10-15mg/kg]である。
だがしかし、1つの例外が存在する。
それが“2歳未満”に“アセリオ”を使用する場合。
2歳未満にアセリオを使う場合に限って、1回量は[7.5mg/kg]となる。
理由は「2 歳未満の小児ではクリアランスが低い」から。
経口製剤と座薬は2歳未満でも1回量は[10-15mg/kg]でいい。
アセリオのみ1回量は[7.5mg/kg]。
これは知らないと絶対に気づかないこと。
ぜひ覚えておいてほしい。
なんて偉そうに書いている自分も実はこのことを知ったのはわりと最近だったりする。
というのも、2歳未満の子どもに対するアセリオの指示だけなぜか用量が少なかったので医師に確認したのがきっかけ。
アセリオの添付文書には確かにそう書いてあったが、アセリオだけ用量が少ない理由にイマイチ納得ができず、医師にしつこく確認すると根拠となる資料を教えてくれた。
日本小児科学会の提言のひとつで2021年に示されている「解熱鎮痛剤アセトアミノフェン静注液の過量投与に関する注意喚起」
https://www.jpeds.or.jp/modules/guidelines/index.php?content_id=138
添付文書にもインタビューフォームにも提言にも書かれているのだからと納得することができた。
ちなみに自分がすぐに「そうなんですね」と納得できなかった理由を少し補足する。
アセリオに限らず、アセトアミノフェンの1回量は[10-15mg/kg]というのが基本であることは先に述べた通り。
この基本を知ったうえで今の自分の施設がアセトアミノフェンの投与量がどう設定されているかを思い出してみてほしい。
おそらく1回量[10mg/kg]の人がほとんどではないだろうか。
うちの前職場も1回量[10mg/kg]で設定されていた。
もちろんなんら悪いことではなく、適正用量で使用されている。
では、[10mg/kg]で効果が乏しいから[15mg/kg]に増量するというパターンを経験した人はいるだろうか。
個人的な印象としてはあまりいないのではないかと思う。
もちろんアセトアミノフェンが効かないのであればNSAIDsを併用するとかラダーに沿って鎮痛剤を強化していくのが順当な流れとなる。
しかし、実はアセトアミノフェンの用量が不足しているがために鎮痛効果が発揮されていないだけという可能性もあるということをひとつ紹介しておきたい。
日本人というのはリスクマネジメントにかなり気を遣う文化のようで、1回量[10-15mg/kg]と幅があるにもかかわらず、効果の認められうる最低用量で使うことが多いらしい。
確かに10mg/kgで効果が発揮されるならそれに越したことはない。
まずはそこからはじめるとして疼痛評価を行えばいいと思う。
ただ、[10mg/kg]で効果が乏しいからとすぐさま次のステップに進むのはちょっと考えてほしい。
自分の経験として、[10mg/kg]で効果がなかった人が[15mg/kg]に増量するととたんに痛みがなくなったということもある。
ほんの少しの用量の差。
しかしその少しの差で痛みが緩和されるかどうかが決まる。
海外なんかではけっこう思い切って使うみたいで上限いっぱいで使ったりするとしっかり効果を実感できることも多いと聞いたこともある。
さらに言うと“アセトアミノフェンよりNSAIDsの方が効果が強い”というのも抗炎症作用の違いがあるとはいえ、“アセトアミノフェンが低用量で使用されているため”という理由も関係しているかもしれない。
例えば頭痛なんかの炎症と関係ない痛みにはアセトアミノフェンの方が効果が弱いなんてことは本来はないはずなのに。
ちょっと脱線したけれど、話を戻す。
自分が医師にアセリオの用量についてしつこく聞いたのは、医師の心情的な采配で低用量を指示しているのかどうかを知りたかったというわけ。
まぁさすがにそんなわけはないんだけど確固たる理由を知りたかったのと聞きやすい医師だったのでぐいぐいいってみたという話。
もしかしたら医師の指示を確認するときに投与量まで意識して確認してないという人もいるかもしれない。
医師の指示を信じてその通りに投薬する。
もちろんそれでいいんだけど、基本的な投与量を知っておくことで「あっこの人は10㎎/㎏でよく効いてる」とか「この人は15㎎/㎏なのに効きが悪そうだから次の対策を考えないとな」とかそういう視点を持てたら疼痛評価がもっとやりやすくなるし、もしかしたら痛みと向き合うことにやりがいをもてるかも。
なんて思ったりしました。
2歳未満の子どもを見る機会は小児科以外では限られていると思うけど、だからこそ知っておいてほしいなと思って今月はこのテーマでした。
おわり。
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